店頭流通

カデンザ 放送と通信の融合に自信

2009/12/24 18:45

週刊BCN 2009年12月21日vol.1314掲載

 カデンザ(安達寛高社長)は、インターネットのコンテンツをテレビで閲覧できる独自技術「ROBRO(ロブロ)」を採用したテレビを「今後2年間で100万台普及させる」ことを目指す。まず、同社とオリオン電機(矢野栄幸社長)、ドウシシャ(野村正治社長)で共同開発した19V型液晶テレビを、ドウシシャを通じて6万9800円前後で来年1月中に発売する。さらに、大手テレビメーカーからも引き合いがあることから、今後1年の間に、オリオンに加えて「もう1社、採用メーカーを増やしたい」(安達社長)考えだ。カデンザは、「ROBRO」のライセンス販売やシステム構築などにより、再来年度(2011年6月期)に売上高35~40億円を目指す。

独自技術ROBROを起爆剤に

安達寛高社長
 カデンザがテレビ向けのプラットフォームとして開発した独自技術「ROBRO」は、リモコンでテレビのチャンネルを切り換える感覚で、インターネットを閲覧できるもの。各サイトのリンク部分に番号を割り当て、その番号をリモコンで入力すると、リンク先に飛ぶ仕組みだ。マウスやキーボードは不要なので、普段パソコンを利用しない人でも、簡単にインターネットを利用できる。また、テレビ画面の手前に透明フィルタをかけることで、テレビ放送を観ながら、その放送に対する「2チャンネル」のコメントがテロップ状で流れているように見える仕組みも開発。今までにない、テレビの使い方を提案する。

 現在、大手メーカーが販売しているインターネット対応テレビは、それぞれ独自のCPUやブラウザを採用しているため、「YouTube対応」といったように、対応製品でなければウェブサイトをうまく表示できなかったり、利用ができないなど、テレビをベースにしたネット対応テレビには限界があった。

 一方、カデンザが開発した技術「ROBRO」は、インテルのCPU「Atom」を搭載し、マイクロソフトの「Internet Explorer」をベースにしている。そのため、テレビメーカーは、「ROBRO」をテレビのプラットフォームとして採用することで、「PCサイトが閲覧できる仕組みを安価に構築できる」という。つまり、「パソコンをテレビとして使用する『テレパソ』とは逆の発想で、テレビをベースにインターネットが閲覧できる」ようになる。

 「NHK」「フジテレビ」などのチャンネルをリモコンで切り替えるように、あらかじめ13~89チャンネルに割り当てた「Yahoo! JAPAN」や「楽天市場」などの閲覧や利用が可能。13~89チャンネルまでの計76サイトは、サイト運営各社とカデンザとの交渉で決める。そのほか90~99チャンネルは、パソコンのブラウザに「お気に入り」を登録するような感覚で、ユーザーが決められる。

 この仕組みを活用して、「販売店が自社のウェブサイトをあらかじめ登録しておいて宣伝に使ったり、プライベートブランドのように販売することもできる」。また、「ネットショップが『ROBRO』搭載テレビを活用すれば、パソコンユーザー以外の利用者を獲得することにつなげられる」。そのほか「カーナビと連携させて、自動車用品メーカーが『ROBRO』を採用したテレビを売ることも想定できる」など、「どこがテレビを売ってもいい」という。

 さらに、ネットの特性を活用し、13~89チャンネルに割り当てたサイトが利用されるごとに、メーカーに成果報酬をバックする仕組みを検討中。テレビメーカーは「テレビを売ったあとにも収入が得られるストック型ビジネスが可能」なことから、同社では「すべてのテレビメーカーに採用してほしい」考えだ。

 ブロードバンドの光回線(FTTH)は、右肩上がりに拡大し、契約数は1442万。一方、DSLは減少傾向にあるものの、まだ1159万が残っている。安達社長は「光回線の契約数をさらに拡大させるためには、普通に売ってもなかなか売れないだろう」と指摘。「ROBRO」を使えば、テレビの代金を回線料に組みむなど、通信契約とパソコン販売を組み合わせるような販売手法も想定できるため、テレビが格安で販売されることもあり得る。安達社長は、「放送と通信が具体的に融合する。今年はIPテレビ元年になる」と、自信を示している。(田沢理恵)

来年1月中にドウシシャを通じて発売するオリオン電機製19V型インターネット機能付き液晶テレビ「ロブロTV」。CPUには「Atom」を採用した(上)。リンク部分に表示された番号を押すと、リンク先に飛べる仕組み。普段パソコンを利用しない人でも、簡単にインターネットを利用できる(下)
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