KDDIは、センサで取得した動的で大量の実空間情報を加工や変換、マッチングなどにより抽出する「センサーデータマイニング」の研究を、5~6年前から推進してきた。これは拡張現実(AR)の中核を成す技術である。現在は、AR技術「実空間透視ケータイ」β版プロジェクトが進行中。最新サービスを一足先にβ版で公開する「au one ラボ」で、「地球アルバム」と「トラベルビューア」を提供している。KDDIでは「まずはユーザー数を増やしたい」としている。
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KDDI 松本正明氏 |
KDDI研究所の企画調査グループの土井渉氏は、「携帯電話で高機能なものが登場しているが、ユーザーはすべて把握できていないのではないか。対話型のインタフェースの必要性を感じたことが地球アルバムやトラベルビューアを開発するきっかけとなった」と話す。対話型のインタフェースには、直感的な入力方法やデータマイニングの活用法、出力方法、楽しい・ワクワクの提供方法など四つのポイントがあるという。
KDDIが定義するARとは、「実空間上に情報を重ね合わせるもの」(KDDIの松本正明・ネットワーク技術本部技術戦略部研究開発グループ課長補佐)であるが、人間の「認知能力を拡大し、もっと広く周囲と接点を広げて、人間の現実の捉え方を変革する可能性もある」(土井氏)と説明し、幅広い意味が含まれている。
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KDDI研究所 土井渉氏 |
KDDIでは、携帯電話端末の周辺の実空間情報は実写映像を表示し、遠くはCGで表示する。「地球アルバム」は、撮影した写真に位置情報が付与されるほか、写真のタイトルやその写真についてのコメントを編集・保存することができるアプリケーション。「トラベルビューア」は、旅行のクチコミサイト「フォートラベル」のコンテンツを実空間透視ケータイ上に表示し、フォートラベルとサーバー連携している。クライアント側では、実空間透視ケータイエンジンが共通で、複数のサービスが構築可能となっている。松本課長補佐は、「ダウンロード数が伸びている」状況だと話す。
将来的には、どのようなビジネスモデルを構築できるかが課題となってくる。松本課長補佐は、「AR空間の中で、その時間でしか買えない場所にタグを表示して商品を買ってもらう」アイデアを披露する。ただ、サービスの普及には「ハードの進化も必要」(松本課長補佐)とも指摘する。現在のところ、不動産業界やゲーム業界、教育関連などから引き合いがあるという。(信澤健太)