店頭流通
ラオックス 山下巖・前社長インタビュー(上) 「まるで財務部長のような2年間だった」
2009/09/15 18:45
週刊BCN 2009年09月14日vol.1300掲載
――今年6月25日、新たな大株主として中国家電量販店の蘇寧電器を招き入れることを決め、その資本提携を機に、8月3日には約2年間務めたトップを辞任しました。厳しい財政状態から、中国企業との資本提携という策を打つまでに至ったこの期間をどう振り返っていますか。
山下 一言でいえば、まるで財務部長を務めていたような2年間でした。家電小売業の社長として本来考えるべきことは、「たくさん売って、どれだけユーザーに喜ばれるか」です。ただ、私の立場は違ったように思います。家電小売業の社長として仕事する時間は、残念ながらとれなかった。
――財政難から資金繰りに奔走していた、と。
山下 社長に就いた直後から資金的に苦しくて、蘇寧電器を含めて2回、スポンサーを変えました。外からは簡単に決まったように見えるかもしれませんが、その間には複数の企業と交渉し、それゆえに、経理や総務、人事担当者などを含めて資料づくりや取締役会での説得工作の連続でした。出資してくれる企業を探し求めて飛び回っていたというのが実感です。なので、新たな出資企業が見つかったことに、正直、今はほっとしています。
――大株主が投資会社から一転、中国の家電量販店とは驚きました。どのようなパイプや経緯があったのですか。
山下 ラオックス現社長の羅(怡文)さんの存在が大きいですね。羅さんは在日中国人向け新聞を発行したり、外国人向けに免税品の販売をするなど、中国と日本ともに精通しています。日本語も達者です。私とは十年来のつき合いで、昨年暮れに何らかの形でパートナーシップを組めないかと相談したのがきっかけです。その後、羅さんを仲介人として新たなスポンサーを探すことになり、蘇寧電器を具体的な相手として交渉が始まったのが5月上旬でした。そこから1か月足らずで契約に至ったというのが経緯です。
――なぜ中国企業を選択されたのですか。
山下 郊外店を閉鎖した後のラオックスがもつ一番の強みは、家電の免税販売事業です。とくに中国を中心としたアジア地域の人向けでは、国内トップレベルの力があると自負しています。ですので、中国企業とのコネクションはシナジーを発揮しやすいと考えました。
例えば、中国から来た観光客向けにラオックスが製品を販売し、帰国したら蘇寧電器が修理・サポート業を請け負うような形ができるといった効果が期待できます。また、ラオックスのブランドイメージは中国でも高いですから、蘇寧電器が中国にラオックスの看板を掲げた店舗を今後つくる可能性もあります。
蘇寧電器は約900店舗を構え、年商は1兆4000億円を超える中国の有力家電量販店です。その大手企業と組むことは、今のラオックスの強みを生かし、今後の成長を支える有力な基盤になると考えたのです。
・後編に続く
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