店頭流通
<BCN REPORT>拡大する地デジチューナー市場 「もったいない」がカギ
2009/08/10 16:51
週刊BCN 2009年08月10日vol.1296掲載
「本当の意味のエコ」を訴求
電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、地デジチューナーの国内出荷実績は、2008年1月以降、毎月9000~1万6000台前後で推移してきた。しかし、今年4月には前月比約2倍の2万8000台に、さらに6月は3万5000台にまで急速に拡大した(図1)。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」の販売台数は、今年1月以降、前年同月に比べ2~4倍に拡大している(図2)。「BCNランキング」に登場するメーカーは、アンテナメーカーのマスプロ電工やDXアンテナ、パソコン周辺機器メーカーのアイ・オー・データ機器(I・Oデータ機器)、バッファローなど(図3)。6月にメーカー別販売台数シェア31.1%を獲得してトップに立ったマスプロ電工は、03年に業界初の地デジチューナー製品を投入した市場の開拓者でもある。「思ったように売れなくて苦戦していたのが、去年暮れあたりから順調に伸びてきている」(マスプロ電工の井澤譲・東日本営業部長 兼 関東ブロック長)という。
また、パソコン周辺機器メーカーとして、05年12月に他社に先駆けてテレビ向け地デジチューナーを発売したI・Oデータ機器も、「当時はまだ早すぎた」(山田邦博・営業本部コンシューマ営業部部長)と振り返る。しかしその後、08年5月に発売した製品が、口コミも手伝ってネット通販で売れ始め、販売が拡大。今年に入ってからは、「前年とは比較できないほどの伸び」(山田部長)に手応えを感じている。
メーカー各社がターゲットにしているのは、主に子ども部屋や寝室のテレビ。「リビングのテレビは薄型テレビに買い替えたとしても、2~3台目のテレビの地デジ対策は安く済ませたいという人や、まだ使えるテレビを捨てることに抵抗があるという人もいるはず」と、各社は声を揃える。今使っているテレビを生かすという「本当の意味でのエコ」(平本好和・I・Oデータ機器営業本部コンシューマ営業部担当部長 兼 営業3課課長)を訴求し、「認知されれば売れるはず」と睨んでいる。
しかし、地デジ対策として一般的に知られているのは、やはり薄型テレビへの買い替えだ。家電量販店のチューナー売場は、以前に比べて目立つようになってきてはいるものの、テレビ売場とは離れた場所にあったり、テレビ売場の一角に小さくコーナーを設けているだけの店もある。積極的に販売しているようにはみえず、一般消費者のチューナーの認知度はまだまだ高いとはいえない。
家電メーカーも続々参入か
こうした状況のなか、7月8日に三洋電機がチューナー市場への参入を発表した。同社は「2011年7月以降、使えるにもかかわらず放送を受信できないテレビは1200万台」(佐々木慶宏・三洋電機コンシューマエレクトロニクス事業推進部部長)と分析。製品化のキーワードに「もったいない」を掲げる。さらに録画機能を付加することで、チューナー単体より露出度の高いレコーダー売場での展示も狙う。市場規模は小さいものの、参入メーカーの増加や「ディスカウントストアやGMSで安価に出回ってきている」(マスプロ電工の井澤部長)という状況は、ユーザーニーズの高さを表している。三菱電機は、明言は避けたものの、地デジチューナー市場への参入について「視野に入れないといけない」(田代正登・家電事業部長)との見解を示した。
今後の需要拡大に向けて、I・Oデータ機器とマスプロ電工は生産体制を強化。I・Oデータ機器は、「今年の年末の販売台数は、夏商戦の2倍以上の伸びを見込む」。マスプロ電工も「年末は前年比5割増にもっていきたい」と意気込む。
メーカーや放送事業者、総務省などで組織する地上デジタル推進全国会議は、アナログ放送停波の2011年までに「1億台のデジタル放送受信機を普及させる」という目標を掲げる。09年6月時点の実績は5374万3000台で、目標の5400万台を下回ったが、その差は26万台にまで迫っている。普及には、今後もエコポイントによる薄型テレビの買い替えが寄与していくとみられるが、チューナーの需要拡大も見逃せない。1~3万円程度で地デジ対策ができるということが今まで以上に認知されれば、地デジ移行のスピードは加速するはずだ。
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