店頭流通

キヤノンとキヤノンMJ サーバーのごとく使えるMFP発表

2009/07/20 18:45

週刊BCN 2009年07月20日vol.1293掲載

 キヤノンとキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は7月13日、同社で「次世代複合機」と呼ぶデジタル複合機(MFP)の新ブランドを立ち上げた。新ブランドは企業の基幹システムなど他のITインフラとの連携性を強化したほか、管理面を容易にしTCO(総所有コスト)の削減などを実現する機能を新たに搭載した。国内MFP市場は年々縮小傾向にある。高機能化する一方でユーザー側はこれをフルに使いこなせず、導入側も他の機器との連携構築に面倒な作業を強いられてきた。これらを「すべて簡単にした」のが新ブランドという。新味を打ち出すことで一時的な導入は進むだろう。継続的に販売台数を伸ばすには、どう「売る側」のメリットを打ち出せるかにかかっている。


 今回の新ブランドは「imageRUNNER ADVANCE」。同社MFPとしては2000年9月以来の新機軸製品となる。最近は競合メーカーも「ネットワーク複合機」として他のシステムと連携性を訴求している。同社の新ブランドは機器本体のHDD領域にある「アドバンスボックス」を利用することで追加コストを要さずにファイル共有ができる。また、スキャナで電子化した紙文書はもとより、オフィスで使用する一般的な電子文書も格納可能。特徴的なのは、同社で「親子連携」と呼ぶセンター機と部門別に配置する子機(小型MFP)同士の連携機能。分散印刷のニーズが高まっていることから、他の複合機に保管した文書を出力したりデータ共有ができるようにした。いまのところ、「親子連携」はMFP同士だが、ネットワーク連携できるシングル機を来年以降に発売する計画だ。

 新ブランドのMFPは、MFP自体を企業内のサーバーやHDD、情報共有システムとして利用できる。通常は、社内の文書管理システムを構築する場合、MFPに加えてサーバーやHDD、アプリケーション、ネットワーク環境などを同時に構築する手間が発生する。同社の新MFPはこうした作業が軽減できる。しかも遠隔監視やバージョンアップといったWebサービス化する「マネージド・プリント・サービス(MPS)」など、さまざまな付加サービスを提供できるようになり、「売る側」のメリットが大きくなるという。

 記者会見後に質問に答えたキヤノンMJの芦澤光二・副社長は「複合機というよりもネットワークデバイスだ。パートナーは、カウンターチャージなど従来の料金に加え、システム・保守費用を得ることができる」と、SIerなどにとってはさらに売りやすくストックを得やすいビジネスモデルになると説明する。さらに、SI(システム構築)力に乏しい事務機ディーラーに対しては、「キヤノンITソリューションズが一緒に案件獲得する体制を敷く」(同)という。

 新ブランドの立ち上げで国内MFPで販売台数シェア20%を目指す。だが、この数字は現在の実績に近い。景気低迷で急激な販売増は期待できないが、「来年以降にシェアが大きく伸びる」(芦澤副社長)と新MFP投入に期待を込める。MFPの「売り方」を知るSIerは意外と少ないといわれる。新ビジネスモデルを浸透させ、案件を地道に増やすことができるかどうかが問われる。(谷畑良胤)
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