大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>126.シャープが多角的に取り組む発電事業
2008/12/15 16:51
週刊BCN 2008年12月15日vol.1264掲載
2009年春をめどに合弁会社をローマに設立し、総投資金額は約1000億円を予定。2012年末までに複数の太陽光発電所を展開、合計で189MWの規模を発電し、売電事業を行う。
電機からエネルギー事業へ
新会社への具体的な資本金、出資比率は現時点では明らかではないものの、「シャープの出資は、マイノリティにとどまる」(代表取締役兼副社長執行役員の濱野稔重氏)としている。だが、マイノリティとはいうものの、今回の提携によってシャープは、電機メーカーとしての事業に加えて、新たにエネルギー事業に乗り出すことになる。しかも、今後は欧州地域に複数の発電所を展開する計画で、エネルギー事業を拡大する姿勢をみせている。
「他の欧州の電力会社からも同様のオファーがあり、検討していきたい」と濱野副社長は語っており、発電事業が同社の新たな事業の柱になることも見逃せない。
「シャープは、太陽電池の原材料の製造、製造装置の自製化、セルやモジュールの生産、システムインテグレーションに加え、発電事業までを含めた、トータル・ソリューション・カンパニーを目指す」と、これまでとは異なる新事業創出にも自信を見せる。
発電事業がどの程度の売上高に到達するかは未知数だが、中長期的に同社の経営にどんなインパクトを及ぼすかが注目されよう。
シャープは、エネル社とのもう一つの提携を発表した。両社に、欧州の生産会社を含めた3社で、イタリア国内に、年間1GW規模まで拡張可能な薄膜太陽電池工場を建設するという。同工場ではセルからモジュールまでの生産を行い、第1次展開として2010年に年間生産能力480MWの生産体制での稼働を目指す。
現時点では、欧州の生産会社の具体名を明らかにしていないが、12月には、生産を行うための合弁会社設立に向けて、3社で合意文書を結ぶ考えで、その時点で会社名などが公表されることになる。
生産設備のソリューション化
ここでも、シャープは新たな取り組みを行う。この生産工場には、シャープが2010年に稼働する予定の大阪府堺市の太陽電池工場と、まったく同じ設備を導入する。シャープは技術支援、運用支援を提供する形態で、ロイヤリティ収入を得る契約とするのだ。濱野副社長が「太陽電池事業の新たなビジネスモデルとなる」というように、生産設備のソリューション化ともいえる仕掛けに踏み出したのだ。
シャープの試算によると、同様のロイヤリティ契約を3か所と結ぶと、一つの工場を自前で建設したのと同じ収益を得られるという。「北米地域にも同様のモデルを展開できるだろう」とし、このビジネスモデルの確立を目指す。
シャープは、太陽電池事業において、自らセル、モジュールを生産し、供給するだけでなく、発電/売電ビジネス、ロイヤリティビジネスといった新たな事業モデルに踏み出す。今回の二つの提携発表によって、太陽電池事業を多角的に展開していく姿勢の一端が明らかになったともいえよう。
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