大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>124.三洋電機の子会社化によるパナの課題は

2008/12/01 16:51

週刊BCN 2008年12月01日vol.1262掲載

 パナソニックにとって、三洋電機の子会社化にはいくつかのメリットがある。なかでも、太陽電池、二次電池といった電池事業でのシナジー効果が大きい。 

 三洋電機独自の技術であるHIT太陽電池は、アモルファスと単結晶のハイブリッド化によって業界トップクラスの性能を発揮。2007年の生産量は全世界シェア4.3%で第7位。日本ではシャープ、京セラに続く3番目につけている。

 三洋電機では2008年には全世界電力の0.1%に過ぎない太陽光発電が、2040年には25%を占めると予測。今後、大幅な市場拡大が見込まれる領域に足を置くのだ。

巨大電機メーカーの誕生だが

 もちろん、パナソニックが持つ家庭用燃料電池事業と補完関係もあり、パナソニックは、グループとして二つの将来エネルギーの技術を持つことになる。

 一方、電池事業のもう一つの柱である二次電池事業は、ブランドが先行するeneloop事業以上に、PC向け、携帯電話向けなどに利用されているリチウムイオン電池を取り込めることが大きい。

 さらに、自動車向けのHEV事業では、三洋電機はフォルクスワーゲングループと提携。2020年には全世界累計1300万台の搭載を目指し、HEV市場において40%のシェア獲得を目論む。パナソニックは、この分野でトヨタと提携しており、複数の大手自動車メーカーに対する提携関係をグループとしてカバーすることができる。

 一方で、関連会社約800社、従業員約40万人という規模の電機メーカーの誕生だけに、重複・不採算事業の見直しを背景にした再編は避けては通れないだろう。

「根本は同じ」といえるか

 もともと三洋電機の創業者である井植歳男氏は、パナソニックの創業者である松下幸之助氏の妻、むめの氏の実弟。パナソニックが、松下電機器具製作所として創立した1918年には、創業メンバーの一人として名を連ねている。

 それだけにパナソニックと三洋電機の経営に対する根幹部分においては、基本的考え方が近いことは容易に推測できる。大坪社長も「正直なところ、いまの段階で、相手の社風はわからない。だが、同じ地域に本社を置く会社。業績悪化から改革に取り組むという同じ経験をした会社であることを考えると、根本に持っているものは同じではないか」と語る。

 パナソニックは2004年に、同じ松下幸之助氏を創業者としながらも、長年ライバル関係にあったパナソニック電工(旧・松下電工)を子会社化し、その統合を迅速に実行してきた経緯がある。「生まれは一緒だが育ちは違う」といわれた両社の統合には多くの困難を伴ったが、これらの統合を迅速に成し遂げたのは、部門ごとにプロジェクトチームを設け、それぞれが統合に向けた議論を徹底的に行い、両社納得のうえで事業再編に取り組んでいったからだ。

 三洋電機との会見の席上、大坪社長は、今後、両社でプロジェクトチームを立ち上げることを発表。これは、パナソニック電工の際と同じ手法だ。また、子会社化後には、事業部レベルに落とし込んだプロジェクトチームによる議論を実施するのも明白だろう。

 パナソニック流の手法を用いて、両社のシナジーを迅速に形にできるかどうかが注目される。
  • 1