大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>123.シャープ液晶テレビの落とし穴を埋める堺工場
2008/11/24 16:51
週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載
ソニーとの提携によって、稼働させるこの工場では、出資比率に応じて、シャープが3分の2、ソニーが3分の1の比率で、第10世代のパネルを調達することになる。
世界シェア引き上げを狙う
この出資比率をソニーが引き下げる方向で検討を開始したとの一部報道も出ているが、シャープの片山幹雄社長は、「それはあり得ない。そうした話は聞いていない」と否定。一方で、9月30日までに、同工場を運営するための合弁会社の設立計画が遅れていることについては、「経済環境の大きな変化が影響している。だが、世界のテレビ競争に勝つための提携であり、両者にとってプラスになる形でのやり方を模索している段階にある。大枠は変わらない」とし、共同で事業を推進する姿勢には変化がないことを示した。だが、今後の世界における需給バランスが崩れ、液晶パネルが過剰に供給されるのではないかとの見方もある。堺工場の稼働によって、パネルが供給過多となり、市場価格の下落へとつながることで、業績にマイナスに働く可能性も一部で指摘されている。
しかし、シャープの強気な姿勢は変わらない。むしろ、堺工場の稼働によって、一気に世界シェアを引き上げようという考えだ。
片山社長は、その背景をこう説明する。
「04年に稼働した亀山第1工場の第6世代パネル生産によって、シャープは32インチ、37インチの市場をけん引してきた。さらに、06年の亀山第2工場による第8世代の生産体制で、46インチ、52インチという大画面市場において、競争力を持った製品を投入してきた。だがその間、韓国や台湾の液晶パネルメーカーが、第7世代、第7.5世代の液晶パネルの生産によって、40インチ、42インチの領域で、競争力を持つ製品を投入してきた。シャープにとっては隙間となった画面サイズで、そこに落とし穴があった」
一番弱いところを埋める
亀山工場での生産では、40インチ、42インチでは無駄な部分が増え、決して効率的とはいえない。無駄な部分が出ることを承知で生産するか、台湾や韓国からパネルを調達するかという方法しかないのだ。「昨年、シャープが米国市場で腰が引けていたのは、40インチ、42インチを持っていなかったことが大きい」と、片山社長自らも認める。そして、「中国では40インチが平均サイズとなっており、今後、米国でも同様になるだろう。相当先まで40インチ、42インチが主戦場になるはずだ」(片山社長)ということを考えれば、この領域での競争力確保が必須条件となる。
ここに堺工場の意味がある。堺工場の第10世代パネルは、40インチ、42インチに競争力を発揮できる生産体制を敷くことが可能となる。「シャープが一番弱いところを埋めることができ、すべての製品ラインで競争力を発揮できる」というわけだ。その点では、堺工場が稼働する意味は大きい。
裏を返せば、シャープが本当の意味で、世界で戦う体制が確立できるのは、2009年度中の堺工場の稼働を待たなくてはならないともいえる。
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