店頭流通
九十九電機、経営危機に直面
2008/11/10 16:51
週刊BCN 2008年11月10日vol.1259掲載
ネット隆盛、デバイス販売に限界か
秋葉原の老舗パソコン専門店・九十九電機(ツクモ、鈴木淳一社長)が民事再生法の適用を10月30日に申請した。現在、営業は継続中だが、創業以来最大の経営危機に直面している。自社ブランドパソコンや大手量販店があまり扱わない海外メーカー製、パーツやロボット関連、業務用映像機材など、ハードウェアマニアを魅了する店づくりをしてきた。企業や官庁・学校向けの法人ビジネスにも早くから取り組む。東名阪と札幌で法人向け営業を展開し、今年10月からは地域のソフト開発ベンダーと提携する「ツクモソリューションパートナー」制度を本格的に始めた矢先のことだった。
HDDやメモリなどパソコン部品は高性能化や値崩れとの戦いだが、一方でそれがよりパフォーマンスの高いデバイスを求めるユーザーニーズを掻き立てる構図にある。専門的な知識が必要で、かつ部品単位の売買になるため商売がとても細かい。大手量販店が苦手とする分野であり、ツクモは専門店の強みを生かした独自のポジションを築いてきた。法人向けでも、電気電子部品の品揃えのよさを売りに、理系の大学や高校への販路を開拓。昨年度(2008年8月期)は、法人向けビジネスで前年度比約10%増を達成していた。
しかし、ユーザーニーズは着実にソフトウェアやネットサービスへ移っている。パーツ・デバイス販売の粗利益率の低さも相まって、経営を圧迫。法人向けではウェブや電子メールサーバーのアウトソーシング化、外部のサービスを利用するケースが多数を占め、これまである程度の粗利が見込めた社内設置型のサーバー関連の受注の困難さが増す。
これを補うためにソリューションパートナー制度を発足。第一弾として都内のベンチャー企業と提携した。名阪・札幌でも同様の展開を推進し、今期は計4─5社と組んでウェブ制作やSEO(検索エンジン最適化)、運用受託などのサービスメニューと本業であるパーツ・デバイス販売をワンストップで提供する戦略を立てていた。店舗を構え、営業力のあるツクモと開発力があるソフトベンダーとのパートナーシップで中小企業の需要を取り込む計画だったが、今回の経営危機で見直しを求められる可能性もある。
ツクモの強みは店舗を構える信用とブランド力である。パソコンパーツからロボット、業務用映像機材まで揃える店は他にそうそうはない。ただ、そのビジネスの基盤である店舗経営が行き詰まった。大手SIerが手を出せない中小零細企業、家電量販店が苦手とするハードウェアマニア層、電気電子やロボット部品を気楽に買える利便性を享受していた理系の教育機関など、万が一、今のツクモがなくなれば困るユーザーが出てくるのは明らか。ツクモの経営難を残念がる声も多数聞かれる。
今後はスポンサーを探すなどして生き残りを図るものと思われる。同業のソフマップはビックカメラ傘下で専門店としての強みを生かす。“ツクモ”という社名の由来は「次が百である」という「次百(ツグモモ)」。常に100%を目指すというチャレンジ精神からきている。厳しい事業環境ではあるが、業績回復に向けての再挑戦を応援したい。(安藤章司●取材/文)
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