大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>118.ソースネクストの「Uメモ」が及ぼす影響

2008/10/20 16:51

週刊BCN 2008年10月20日vol.1256掲載

 ソースネクストが、「Uメモ(ユーメモ)」戦略を開始すると発表したのは8月下旬だった。Uメモ戦略は、これまでCD-ROMディスクで提供されてきたソフトをUSBメモリに収録して提供するというものだ。9月5日に「ウイルスセキュリティZERO」など主力7タイトルのUSBメモリ版を発売したのに引き続き、10月には「本格読取 2 Professional」などUメモ版の新製品を矢継ぎ早に投入している。

ドライブなしのPCも大丈夫

 松田憲幸社長は、「モバイル系のノートPCには、CD-ROMドライブが搭載されていないものが多い。しかも、今後、市場拡大が期待されるUMPCやネットブックにも、ドライブが搭載されていないケースが多い。それに対して、USBポートは、ほぼ100%のPCに搭載されている。さらに、CD-ROMに比べて、アクセスが速くインストール時間が短くて済むこと、動作音が静かであること、メモリとして二次使用できることなど、さまざまなメリットがある」と、Uメモ戦略の狙いを語る。

 また、同社の調査によると、CD-ROMドライブを搭載しているPCを所有しているユーザーでは、パソコンソフトを購入し、インストールした経験があるとの回答が77.2%なのに対して、CD-ROMドライブを搭載していないPCを所有しているユーザーでは、これが47.8%にとどまる。

 「ドライブがないことで、ソフトウェアの購入経験に30ポイントもの差が出ている。ほぼ全部のPCで利用できるUSBメモリにすることで、この問題を解消できる」として、Uメモ戦略がソフト販売を加速させるものと位置づける。

 さらに、ソースネクストでは、Uメモ戦略によって、PCソフトをPC本体売り場やPC周辺機器売り場に展開していく考えを示していたが、これは狙い通りの効果をあげているようだ。

USBメモリの調達が課題

 ソースネクストでは、Uメモの初年度出荷計画として、100万本を予定しているが、年間1000万本といわれるUSBメモリ市場から逆算すれば、これだけで約1割のシェアを獲得する計算になる。

 さらに松田社長は「大手量販店からの受注状況を見ると、約7割がUSBメモリで、CD-ROMはわずか3割。当社では、年間500万本のソフトを販売しており、6割をUSBメモリが占めれば、年間300万本の規模になる。予想以上に、USBメモリへのシフトが早いのではないか」と、強気だ。300万本規模となれば、USBメモリ市場への影響力は大きいといわざるを得ない。だが、その一方で、ソースネクストには新たな舵取りが求められる。その一つが、USBメモリの調達である。CD-ROMメディアと異なり、価格変動が激しいなかで、どのタイミングで、どれだけの数量を調達するのかという勘所は、これまでのソフトメーカーには求められなかった取り組みだ。

 さらに、需要の変動にあわせた調達が柔軟にできるかどうかもポイントだ。CD-ROMのように量産プレスができず、一本ずつ書き込むという点でも、需要変動への柔軟な対応には足かせとなる可能性があるかもしれない。

 Uメモ戦略は、ソースネクストにおけるソフト事業の仕組みそのものを変える挑戦である。
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