大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>117.パナソニックがPCにハンドルをつけた意味

2008/10/13 16:51

週刊BCN 2008年10月13日vol.1255掲載

ハンドル搭載のいきさつ

 パナソニックが、Let's noteシリーズの新製品として、携帯ハンドルを搭載したLet's note Fシリーズ(CF-F8)を投入した。同社では、フィールドでの利用を想定した堅牢PC「TOUGH BOOK」を12年前から投入しており、同シリーズにハンドルを付属させてきた経緯がある。「いつかはLet's noteにハンドルを付けたかった。そして、やるならば他社に先行して取り組みたかった」と、AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部・高木俊幸事業部長は語る。想定した利用はモバイル利用ではなく、会議室への移動など社内を持ち歩く場合。また、出張に出かける時、出先の事務所などで利用するといったシーンだ。PCと書類を一緒に抱えて移動するというのではなく、「PCはハンドルで持ちながら、資料を小脇に」という使い方が理想だとする。

 だが、堅牢性を優先し、軽量化が最優先ではないTOUGH BOOKと、軽量化を前提としたLet's noteとでは要件が異なる。ハンドル部を補強すれば、当然のことながら重量が増加する。

 「1600g台を超えたら、Let's noteの名前をつけることはできない。TOUGH BOOKとは異なる設計手法を用いて、ハンドルに強度を持たせる工夫を凝らした。これにより、軽量化を図りながらも、TOUGH BOOKと同じ試験基準をクリアすることに成功した」と、AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターハード設計第二チーム・谷口尚史主幹技師は語る。

 実は、ハンドルの付属によって、Let's noteは新たな進歩を遂げたともいえる。これまで Let's noteは、「軽量」「長時間駆動」、そして「タフ」という観点で進化を遂げ、モバイルノートPCとしては、他社の追随を許さない地位を獲得している。そこに、「UD(ユニバーサルデザイン)」という観点からの新たな進化を加え「ハンドルといえばLet's noteというイメージを定着させたい」としている。これを機に、パナソニック全社で取り組んでいるUD戦略を、Let's noteにも持ち込もうとしているのだ。

UDという新たな進化

 一方、ハンドルの搭載とともに、Let's noteシリーズ初となるワイド画面液晶ディスプレイの搭載も大きな変化だ。

 「ビジネス利用では、4:3の画面がいいという要望がある。とくに、小画面モデルではそれが強い。だが、14型サイズでは、ワイド画面でも大丈夫だという声が増えている。ハンドルをつけることとワイド画面を搭載することは、セットで考えていた」という。このようにFシリーズの投入は、単なる新製品発売ではなく、Let's noteシリーズの進化を大きくドライブするものだといっていい。

 高木事業部長は、「パナソニックは、ネットブックへの参入は考えていない」と語る。それは、今回の新製品投入にあわせて採用した「New Mobile Leader」というキャッチフレーズからもわかるといえよう。

 モバイルPCのリーダーとしての進化を目指す上で、ネットブックとは一線を画した軽量、長時間、タフ、UDといったモノづくりが、これからも進められることになる。
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