大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>115.ソニーが37型以上でシェア30%を狙う理由
2008/09/29 16:51
週刊BCN 2008年09月29日vol.1253掲載
37インチ以上の大画面テレビで30%のシェアを獲得すると公表。さらに、ブルーレイディスクレコーダーでは、40%のシェア獲得が目標だ。
圧倒的な認知度の高さ
ブルーレイディスクレコーダーでは、昨年12月には、矢沢永吉さんを起用した「もったいない」のテレビCMの効果もあり、一時的に60%を超えるシェアを獲得したものの、その後、パナソニックやシャープの攻勢を受けて、年間シェアは約33%にとどまった。品薄などの要因で、後半に息切れを起こしたのが影響している。その教訓を生かしながら、今年は一気にシェア拡大を狙う考えだ。日本リサーチセンターが今年7月に調査した結果によると、「ブルーレイディスクと聞いて一番に思いつくメーカーは」との質問に対して、ソニーと答えた人は、実に83.1%と、圧倒的に印象を植え付けている。それだけに、認知度の高さと、実際のシェアの差を埋める施策が注目されるところだ。
加えて、レコーダーにとどまらず、ブルーレイディスクプレーヤーを国内投入。これがどこまで受け入れられるかといった動きも、今年は注目されよう。
大画面でシェア過半数を狙う
一方、ソニーのシェア目標発言のなかで興味深いのは、薄型テレビのシェア目標を「37インチ以上で30%」としたことだ。というのも、ソニーは、37インチの製品ラインを持っていないからだ。大画面テレビは40インチからのラインアップとなる。しかも、37インチは、シャープの独壇場ともいえる分野だ。
つまり、本来、40インチ以上といえばいい区分を、ソニーにとって不利となる領域区分をベースとして、シェア目標を打ち出しているのである。
ソニーでは、対外的には「業界団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)の区分に準拠しただけ」とコメントするが、実はこの領域区分にはソニーの強い思い入れがある。
というのも、37インチ以上の市場で30%のシェアを獲得するためには、大市場を形成する37インチ製品を持たないソニーにとって、40インチ以上の市場で、50%以上のシェアを獲得しなければならないという計算になるからだ。
裏を返せば、37インチ以上で30%を取るという、一見、平均的にさえ感じられる宣言は、ソニーが持つ大画面製品ライン領域で、過半数のシェアを獲得するという宣言にもつながるのだ。
そして、もう一つ。あえて37インチ以上というカテゴリーを打ち出したのは、「37インチの他社の薄型テレビを、40インチの液晶テレビに置き換える」という意味合いが含まれている証ともみることができる。
ソニーの本音はここにあるといっていい。
同社が、あえて37インチと表現した大画面テレビの区分定義は、むしろ、年末商戦に向けた強い意志の現われといえよう。
ソニーは、はたして37インチ以上で30%のシェアを獲得できるのか。それを推し量るバロメータは、40インチ以上でのシェア50%突破にある。これは、実に大きな目標値だといっていい。
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