大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>105.日本HPがミニノートPCを投入した理由
2008/07/14 16:51
週刊BCN 2008年07月14日vol.1243掲載
一般的にミニノートは、液晶サイズが10.6インチ以下のノートPC製品であり、この領域においては、今年に入ってから、ASUSのEee PCがシェアを拡大。国内市場における存在感を増してきた。
■3条件をすべて満たすPC
今回、日本HPが投入したのは、ミニサイズフルファンクションPC「HP 2133 Mini-Note PC」。システム手帳サイズの筐体に、通常のノートPCとほぼ同等の機能を備え、上位モデルで7万9800円、下位モデルで5万9800円という戦略的な価格設定。1280×768ドットの高解像度を実現した8.9インチ液晶ディスプレイ、上位モデルで160GBという大容量ハードディスクを搭載した点でも、「メインマシンとして使用できる性能を備えた新しいカテゴリーの製品。価格の面でモバイルPCを諦めていた人にも購入していただけるミニノートPC」(パーソナルシステムズ事業統括・岡隆史取締役副社長執行役員)とし、EeePCとは一線を画すことを訴える。
「ノートPCを選択する際には、携帯性、性能、価格という3つのポイントがあるが、必ずどれかを妥協しなくてはならない。例えば携帯性を重視すると価格は20万円前後となり、性能を重視すると今度は携帯性が失われる。そして、価格を優先すると、どうしても性能が劣ることになる。この3つのポイントをバランスよく実現したのが、今回のミニノート」(モバイル&コンシューマビジネス本部プロダクトマネージャーの菊池友仁氏)と説明する。
■気になる“慎重な姿勢”
だが、モバイルという点で捉えると、いくつかの課題がある。標準の3セルバッテリを搭載した際の連続駆動時間は2.3時間。これでは、日本人のニーズに最もマッチしたリアルモバイルでの利用は、諦めざるをえないだろう。重量も1.27㎏と、モバイル用途を想定した国産メーカーの製品と比較しても、やや重さを感じる。
そして、日本HPの慎重な姿勢も気になるところだ。
実は、この製品は顧客ターゲットに関する立案が各国ごとに委ねられており、米国市場では教育分野向けの製品として投入されている。これに対して、日本ではビジネス領域とコンシューマ領域を強く意識した製品として展開する計画だが、まずはオンラインショップからの販売とし、英字キーボードだけを用意するというように、慎重な取り組み姿勢を見せる。
また、北米での発表から、約1か月後に日本で発表し、しかも日本での販売目標は公表しないといったような点でも、やはり慎重ぶりがうかがえる。さらに、すでに米国などでは販売しているのに、発売日を当初予定の6月上旬から6月下旬に延期した点も気になる。
同社は、2007年3月に、日本のコンシューマ市場に再参入したものの、市場における存在感は低いまま。「日本HPのシェアは5位。日本でメジャープレーヤーと認めてもらうためには、2ケタのシェアは必要。それを実現するためのひとつのツールがこのミニノートPC」と、岡副社長は語る。
今回の製品は、実売というよりも、存在感を高める狙いが大きいといえそうだ。
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