大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>103.なぜ放送局は、Vista対応に真剣なのか
2008/06/30 16:51
週刊BCN 2008年06月30日vol.1241掲載
同Packは、Windows Vista Home Premiumおよび同Ultimateに搭載されているWindows Media Centerにおいて、地上デジタル放送に対応させる機能を搭載したものだ。
■搭載は4社のみ、残念な点も
ことの発端は、2006年11月に、米マイクロソフトのバルマーCEOが来日した際に行われた国内PCメーカー8社との会合。Vistaでの地デジ対応の要望が出され、バルマーCEOが日本固有の事情として「帰国してから検討したい」と発言したことにさかのぼる。
それを具現化するように、今年1月のCESでは、一部報道関係者を対象にした会見で、次期Windows Media Centerでの地デジ対応についてコメント。5月にビル・ゲイツ会長が来日した際に、これが公式発表された。
マイクロソフトの発表によると、今夏には開発が完了しPCメーカー各社から、同Packを搭載した地デジ対応PCが発売されることとなった。同社は「15万円以下のボリュームゾーンで、地デジ対応が図れる」と期待を寄せる。
だが、同Pack搭載パソコンの発売を予定しているのは、エプソンダイレクト、ソーテック、富士通、マウスコンピューターの4社だけ。独自に地デジ対応してきたNEC、ソニー、東芝などの主要メーカー、デルや日本HPなどの外資系が参加していない点も気になる。また、自作PCユーザーなどへの配慮が、現時点では用意されていないのも残念だ。
マイクロソフトでは、「年末にかけて、Packを搭載したPCを発売するメーカーが増える可能性がある」(同社)としているが、対応メーカーを増やしていかない限り、影響力は限定的なものとなる。
もうひとつ、今回の動きで見逃せないのが、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの各局が提供するガジェットと、番組サイト、データ放送などとを連動したサービスを開始することを明らかにした点だ。
今年のパソコン夏モデルでは、テレビ局各社が標準でPCにガジェットを搭載するといった取り組みが行われたが、今回の会見では、テレビとネットの連動を進展させていた点が興味深い。単に地デジをPCで視聴、録画するだけでなく、テレビ局が提供する各種サービスを利用することで、PCならではのテレビ視聴スタイルが追求できるようになっているのだ。
■2台目、3台目の移行が鍵
テレビ局がここまでPCに積極的に関与するのは、地デジの視聴スタイルが、大画面テレビだけとは考えていないからだ。テレビ局にとっては、ワンセグによるケータイやカーナビ、電子辞書も、視聴機会を増やすツール。そして、PC利用によるテレビ視聴は、その機会を拡大させる切り札となる。
テレビ業界にとっては、リビングに設置されているテレビのデジタル化よりも、2台目、3台目のデジタル化が、2011年7月までに完了するかがキーポイントとなる。そこにPCが活用可能ならば、それを存分に活用したいという思惑がある。
PCでテレビを視聴するという点では、むしろ放送局側のほうが真剣に考えているともいえる。
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