大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>102.パソコンの秋冬商戦が夏にやってくる!?

2008/06/23 16:51

週刊BCN 2008年06月23日vol.1240掲載

 パソコンメーカー各社から夏モデルがほぼ出揃い、売り場にも活気が出てきた。「PC de TV」キャンペーンの影響や、北京オリンピックを意識した展示もあり、今年はテレビ視聴にフォーカスした展示が目立っているのが夏商戦の特徴といえよう。

 だが、今回の夏商戦は、かなり短期間のものになりそうだ。というのも、例年9月に発売される秋冬モデルが、8月に発売される公算が強いため。つまり、秋冬モデルの商戦が、なんと8月からスタートすることになるのだ。

■ポスト五輪の商戦睨む

 それには大きく2つの理由がある。ひとつは、オリンピック商戦後に、巻き返し体制を早く構築したいパソコン業界の思惑だ。

 大手量販店に話を聞くと、夏商戦におけるパソコンの販売実績は、残念ながら前年割れにとどまるとの見方が支配的だ。

 過去のオリンピック商戦では、デジタル家電売り場の賑わいとは裏腹に、パソコンは前年比2ケタ減というマイナス成長を余儀なくされてきた。今回の商戦では「1ケタのマイナスにとどまるだろう」と、やや期待感があるものの、前年割れとの見方は変わらない。

 パソコン業界としては、マイナス分を取り返すために、いち早く秋冬モデルによる巻き返しに転じたいという思惑があり、北京オリンピックが終わる8月24日を前後して売り場の展示が変わるタイミングに、最新の秋冬モデルに一新したいというわけだ。

 となれば、当然、新製品投入時期が、例年よりも前倒しされることになる。一部メーカーでは、そのタイミングを狙って、新製品を用意しているという話も聞く。

■Centrino2の遅れが引き金に

 もうひとつの理由は、インテルのCentrino2の延期の影響である。Centrino2は、開発コードネームでMontevinaと呼ばれていたノートPC向けプラットフォームだ。WiMaxなど次世代ネットワークを強く意識している点が特徴。

 当初、Centrino2を搭載したノートPC新製品は、6月下旬に主要パソコンメーカー各社から投入される予定であり、夏モデルの切り札的存在になるはずだった。ところが、5月下旬になって急遽、インテルの通達により、これが延期。製品発表を予定していたメーカー各社は、製品投入時期の見直しを迫られ大慌てとなった。

 新たなスケジュールでは、7月下旬にもインテルからCentrino2が正式に発表され、一部メーカーが7月下旬に、多くのメーカーが8月には秋冬モデルの一角として、Centrino2を搭載したノートPCを投入することになりそうだ。つまり、Centrino2の遅れが、秋冬モデル投入の前倒しにつながることになるのだ。

 一方で、例年は8月にiMacの新製品を投入するアップルが、今年に限ってはiPhoneの夏発売に向けた臨戦態勢を取るためか、5月に発売する異例の措置をとった。Windows PCは8月に製品が投入されるものの、Macは足並みが揃わず、9月にノートPCの新製品が登場する可能性が高い、という逆転現象となっている。

 いずれにしろ、夏に秋冬商戦がやってくる、というのが今年の状況。期間が長い分、パソコン売り場にとっては打つ手が増えるメリットにはならないだろうか。
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