Scene
インターコム、「まいと~く」で企業FAX需要つかむ
2008/06/16 18:45
週刊BCN 2008年06月16日vol.1239掲載
多くのユーザー体験がビジネスを支える
――インターコム 高橋啓介社長創業時はホストコンピュータとの通信に使うエミュレータを開発。その後、パソコン通信ソフト「まいと~く」シリーズを商品化し、パソコン通信全盛の1980─90年代中盤にかけて80万本余りを売った。
以来、店頭に並んだ「まいと~く」ブランドは確立された。「まいと~くユーザーが、当社製品の品質や使い勝手のよさを覚えてくれている」と高橋啓介社長は目を細める。ユーザーエクスペリエンス(体験)が無形の資産となって今につながっているのだ。パソコン通信で盛り上がった若者世代は30代半ばに差しかかる。企業では現場をまとめる中堅社員として、情報システムの選定に携わることも少なくない。こうした“まいと~く支持層”がインターコムのビジネスを支えているというわけだ。
まいと~くブランドを冠する「まいと~くFAX」シリーズは、販売店における通信ソフト分野で常にトップシェア。通年でのトップシェアベンダーを表彰する「BCN AWARD」では今年、8年連続8回目の最優秀賞を獲得。企業向けもあり、売れ筋商材の1つ。まいと~くというブランドをうまく活用しつつ、企業のFAXソフト需要をつかむ。
失敗も多く経験した。パソコン通信全盛時代をピークに、売上高を半減させてしまった苦しい時期もあったし、パソコン高速化ソフトでヒットした「SuperXP Utilities」シリーズでは、企業向けの展開が遅れる。お家芸であるはずの「店頭でブランドを形成し、企業向けビジネスで稼ぐ構図がつくり切れていない」と、悔しさをにじませる。
通信を基盤として、セキュリティやユーティリティソフトの分野へ積極的に進出。ソフトをサービスとして販売するSaaS/ASPモデルにも取り組む。昨年度(08年3月期)の業績は、2期連続の増収・営業増益。営業利益率はおよそ20%と高水準を維持する。
通信やセキュリティは競合が激しく、生半可なことでは、勝ち残れない。それでも高い収益力を保つのは、販売店を通じて多くの人に使ってもらったユーザーエクスペリエンスと、それに裏付けられた信頼、ブランド力があるからこそ。「個人と企業はクルマの両輪」と位置づけ、ビジネス拡大を急ぐ。(BCN・安藤章司)
- 1