大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>98.シャープ片山社長の“最も長い1年”の評価は?

2008/05/26 18:44

週刊BCN 2008年05月26日vol.1236掲載

「社会人人生のなかで、最も長い1年だった」--社長就任の最初の1年間を、シャープの片山幹雄社長はこう振り返った。

■大型案件が相次いだ1年

 片山社長が就任して以来、シャープは、大規模な施策を矢継ぎ早に発表した。

 21世紀型コンビナートと称される液晶パネルおよび太陽電池の堺での新工場建設計画の発表や、薄さ2㎜の超薄型液晶テレビの技術発表。パイオニアとの資本提携、東芝との薄型テレビ事業に関する提携、そして、ソニーとの戦略的協業の発表というように、まさに大型案件が相次いだ。それだけに、「長い1年」という言葉は正直な感想なのだろう。

 その一方で、「反省点も多い1年だった」とも語る。

 確かに、1年目の業績は手放しで評価できるものではない。売上高は、前年度比9.3%増の3億4177億円と5年連続で過去最高を更新したものの、営業利益は1.5%減の1836億円、経常利益は1.3%減の1683億円と前年割れ。上期の大幅な落ち込みを下期にカバーできなかったのが要因だ。また、ドルベースで1円あたり20億円の影響があるとされる為替変動の影響も、利益を圧迫した要因だ。

 さらに、年間900万台を目標とした液晶テレビの出荷計画も、824万8000台にとどまり、未達となったことも反省点といえる。

 片山社長は、「海外市場において、市況の変化にあわせた商品企画や価格政策が十分でなかったため、販売台数が大きく下回った」と分析し、さらには「営業利益での1900億円の未達、液晶テレビの900万台の未達は、社長としての1年目の大きな反省点」と語る。

 とはいえ、下期の業績を切り出してみると、売上高、営業利益ともに、半期業績として過去最高の業績だ。下期営業利益は上期比で32.4%増。営業利益率は上期の4.8%から、5.9%へと大きく改善している。この点では、片山社長自身も、「下期の回復は、この1年の成果として、評価できる内容になっている」と満足げだ。

■世界5極での生産体制整う

 では、2008年度はどんな戦い方をするのか。大きな課題は、海外における薄型テレビ事業だろう。

 07年7月に亀山第2工場の第3期ラインの立ち上げにあわせて、メキシコ、ポーランドにそれぞれモジュールからテレビまでの一貫生産を行える新工場を稼働させたが、ポーランドでの立ち上げに予想以上の時間がかかったのも事実。だが、08年度は、これらを含めた世界5極でのグローバル生産体制が整った。

 08年度における液晶テレビは、10.5%増の9000億円を計画。出荷台数は1000万台を目標とし、そのうち国内390万台、北米290万台、欧州170万台、中国を含むその他地域では150万台とする計画だ。薄さ2㎜の液晶テレビも今年度中に出荷する。

 「今年は生産、販売体制が整ったことから、海外で戦う準備が整ったと考えている」と強気の姿勢を見せる。

 「08年度の最終評価は、どこかひとつがポイントというよりも、売上高、利益をしっかりと達成できるかどうかになる」と片山社長は語る。いくつかの課題があがる一方、いよいよ海外での成長地盤が整った2年目がスタートした。
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