店頭流通
デジタル一眼 春商戦中盤、キヤノンに軍配 ラインアップではニコンが優位
2008/05/19 16:51
週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載
X2効果でキヤノンが1位奪還
粘るニコンはすぐ背後に
商戦の主役「EOS Kiss X2」の発売は3月21日。3月第3週(17日─23日)の「BCNランキング」では、発売直後の2日間だけで24.1%もの販売台数シェアを記録し、ぶっちぎりの1位を獲得した。 きめ細かなラインアップ戦略で幅広いレベルのユーザー獲得に成功したニコンに倣ってか、今回は新モデルが出た後も1010万画素の「EOS Kiss デジタルX」を併売していく。上位モデルを「X2」、下位モデルに「デジタルX」という布陣で、昨年、ニコンに奪われた年間トップシェアの奪還を狙う。
X2効果でメーカーシェアも急上昇。それまで販売台数シェアで1位を走ってきたニコンをかわし、発売直後の3月第3週に48.2%のシェアを獲得してトップシェアに返り咲いた。この時点でのニコンとの差は実に20ポイント近く。4月第1週(7─13日)では50.4%のシェアを記録し、5割の大台乗せを果たした。
一方で、ニコンも粘り強さをみせ、じわじわと盛り返している。直近の4月第2週(14─20日)では、トップのキヤノンが44.8%に対しニコンは37.9%。差は7ポイント弱にまで縮まってきた。
ニコンを突き放せない要因は
製品ラインアップにありそう
キヤノンがニコンを突き放せない要因は、ラインアップの数にありそうだ。XとX2の併売作戦を展開し、これまでの「1本足打法」からの脱却を狙っているキヤノンだが、入門層─初級層向けの機種がまだ薄い。直近の4月第2週でトップ10にランクインしているモデルを見ても、キヤノンでは、X、X2の次は「40D」といきなり中・上級者向けになってしまう。 一方でニコンは、初級から中級者向けで、そろそろモデルチェンジも近いのではと噂される「D80」が、値下げ攻勢で2位にランクイン。初級者向けの「D60」、入門者向けの「D40」が続き、中・上級者向けD300も8位につけている。ラインアップを絞るキヤノン対ラインアップにグラデーションを持たせたニコンという状況はまだ続いているといっていいだろう。
レンズキット率にみる
初級者へのアピール度は
上位5社で、初級者層が多く購入していると思われる「レンズキット」の販売台数が占める割合を「レンズキット率」として推移を見た。意外に低いのがキヤノンで、X2発売までは7割を下回る水準。対してニコンは常に7割から8割で推移している。ただ、キヤノンもX2発売以後はレンズキット率が8割を超える場面がみられ、初級者層への訴求力が高まっているようだ。 ここで注目しておきたいのがソニーとオリンパス。ソニーは、キヤノン、ニコンに次ぐ第3位の座を固めつつあるが、ここにきてレンズキット率が8割を超える水準に高まってきている。要因はα350の好調だ。このところ勢いこそ落ち着いてきたが、発売直後のピーク時で8.8%、直近でも5.6%のシェアを獲得した。また、ソニーに一時期は10ポイント以上も水をあけられていたオリンパスだが、E420の発売で勢いを増し、ソニーに肉薄している。
ソニーとオリンパスに共通するポイントはライブビュー機能の充実。コンパクトデジタルカメラのように液晶画面を見ながら撮影する機能に優れている。これが、コンパクトから一眼への移行を容易にする1つのポイントだ。ソニーのα350は、ライブビュー専用のセンサーを別に設けるなどして、コンパクトデジカメに似た操作感を実現。オリンパスのE420も、液晶画面を見ながらのピントあわせが実用的なスピードになった。そのうえ、今ではコンパクトデジカメでは常識ともいえる顔認識機能も備えている。
このところ量販店では「コンパクトデジカメと同じように撮影できるデジタル一眼を求める人が増えた」という声も聞かれはじめた。どれだけ多くのコンパクトデジカメユーザーを取り込むことができるかが、一眼レフのシェア争いにも影響しそうだ。(道越一郎)
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