店頭流通
<BCN REPORT>夏商戦で巻き返し図るPCメーカー各社
2008/05/05 16:51
週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載
パソコン夏モデルは需要を喚起できるか
BCNランキングによると、2007年度(07年4月-08年3月)における量販店店頭でのパソコン販売実績は、前年比3.1%減とマイナス成長となった。月別の推移を見ても、12か月中8か月が前年割れの実績という状況にある。Windows Vista発売以降、コンシューマ市場は低迷のなかにあるのが実態だ。
だが、今年3月の集計では、前年同月比8.4%増の実績となり、この1年で過去最高の伸び率を記録。これから迎えるオリンピック需要に向けて、この流れに弾みをつけたいところだ。PCメーカー各社の08年夏モデルは、需要が上向き傾向のなかで投入されることになる。
デュアルコア比率を高めるNEC
ホームサーバーも提案
NECは、夏モデルにおいて26機種の新製品を投入。デュアルコア搭載比率を96%にまで引き上げ、同時にリモコン操作によるテレビ機能の強化などを打ち出した。
「マイルーム地デジは、パソコンで」をテーマに、水冷デスクトップのVALUESTAR Wや、一体型のVALUESTAR N、高機能ノートPCであるLaVie Cシリーズでは、地デジ、DVDレコーダー、パソコンの3つの機能を搭載していることを訴求。デジタル長時間モード搭載によりハイビジョン解像度のままで現行比約2倍の録画が可能なこと、リモコンによる視聴、録画、再生の操作機能の強化を図った。
また、前回のアテネオリンピックで番組表に多く含まれたキーワードを、プリセットして提供。北京オリンピックに関する番組を簡単に録画できる「おまかせ録画機能」を強化したほか、DLNAおよびDTCP-IP対応機種を拡大したことで、ホームネットワークを利用して、地デジチューナを搭載しない別室のパソコンからも録画番組を視聴できるようにしている。
一方、新たにホームサーバー・クライアントソリューション「Lui」を投入すると発表。ホームサーバー時代に向けた提案もしてみせた。
いよいよボードPC投入の富士通
意欲的な出荷見込む
富士通は、デスクトップPCでは4シリーズ7機種、ノートPCで3シリーズ8機種、モバイルPCでは2シリーズ4機種を新製品として投入する。19機種中14機種がCore 2 Duo搭載モデル(うち1機種はCore 2 Quadを搭載)、また17機種が2GBメモリ搭載モデルとなっている。
やはり富士通でも、テレビ視聴機能の提案が大きなポイントだ。テレビ視聴に適したFMV─DESKPOWER LXシリーズでは、全機種でデジタル3波に対応。「デジタル3波によるダブル録画や、おすすめ番組自動録画に対応したほか、録画した番組を約3分の1に圧縮して、HDD容量を節約できるSD画質変換機能を搭載。デジタル放送の視聴、録画環境を大幅に向上させた」とする。
また、ノートPCの最上位となるFMV-BIBLO NXシリーズでは、長時間録画が可能な250GBのハードディスクを搭載、売れ筋となるFMV-BIBLO NFシリーズでも上位モデルでは地デジチューナを搭載している。NFシリーズでは、新たに天板を着せ替えられる「マイジャケ」にも対応した。
一方、新たに16インチワイド液晶画面を搭載したコンパクト液晶一体型FMV-DESKPOWER Fシリーズを投入。他社が先行するボードPC分野での追随を図る。同社では、Fシリーズを売れ筋の一角に位置づける考えで、意欲的な出荷計画を見込んでいるという。
東芝、ソニーも相次ぎ新製品投入
工夫こらしシェア拡大狙う
東芝では、筐体デザインを一新したdynabookシリーズ3製品と、AV利用を想定したQosmioシリーズ1製品を夏モデルとして投入。dynabookシリーズ上位モデルおよびQosmioでは、HDMI端子を搭載し、同社の液晶テレビ「REGZA」と連動した使い方が可能になる。「REGZAのリモコンを利用して、dynabookおよびQosmioを操作することもできるようになる」という。なお、HD DVDドライブ搭載モデルは、今回の新製品から削除された。
一方、ソニーは、ノートPCの新製品として、VAIO typeCおよびtypeNを発売。全モデルでメモリを2GBにするとともに、機能強化を図った新ホームネットワークソフト「VAIO Media Plus」を搭載している。このほかにも新製品が投入されることになりそうだ。
放送局ガジェット搭載が主流に
「PCでテレビ視聴」の時代は来るか
今回の夏モデルでは、NEC、富士通、東芝、MCJのPCに、NHKおよび在京民放キー局5局が開発したWindows Vista対応ガジェットを夏モデルに標準搭載し、このガジェットから直接、テレビ局が配信する最新ニュースなどを視聴できるようにする。これもテレビとネットを組み合わせた新たな視聴環境を、パソコンで提案するものといえる。
また、量販店店頭でも、5月9日から14社26店舗で「PC de TV体験コーナー」が開設されることになり、量販店を巻き込んだテレビ利用の訴求が行われることになる。
業界が足並みを揃えて訴求するテレビ利用によって、どれだけPC需要を喚起できるだろうか。北京オリンピックの開会式は8月8日。夏モデルの成果が問われる。
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