大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>94.MIDはゲームチェンジャーになり得るか?
2008/04/21 16:51
週刊BCN 2008年04月21日vol.1232掲載
「Full Internet Experience in Your Pocketを実現するのがMID。変わりつつあるインターネットの利用形態に対応したデバイス」(吉田共同社長)というように、フルインターネットの機能をポケットサイズの端末で利用できるようにすることを目指したものである。
■多様な通信に接続が可能
x86プロセッサとしては、最も小さなCPUとなるAtomは、最新の45nmプロセスにより、4700万ものトランジスタを、25平方mm以下のダイサイズに集積。「これまで、CPU性能を1%向上させるためには、3%の消費電力の増加となったが、Atomでは1%の消費電力増加に抑えた」として、低消費電力化に威力を発揮することを訴求している。
また、仮想化技術もサポート。単にメールやウェブを利用するだけでなく、今後利用拡大が見込まれるSaaS型アプリケーションのための端末としての用途も想定される。
ネットへの接続方式は、無線LANやBluetooth、HSDPAといった既存の通信方式に加え、来年商用化を控えているWiMAXも対象となる。東芝が今年1月のCESで参考展示したMIDや、松下電器産業が製品化を発表しているTOUGHBOOKシリーズのMIDのほか、クラリオンの車載向けMID、富士通のLOOX Uの後継とみられる新端末などが、Atom搭載のMIDとして公開されている。
■利用可能な環境が不可欠
だが、MIDが、本当の意味で普及に向けたスタート地点に立つのは、来年春になるだろう。
吉田共同社長も、こう話す。
「インテルは技術ができると、それをいち早く世の中に製品として提供するという取り組みを繰り返してきた。だが、MIDは、そうしたインテルのビジネスのやり方では成り立たない。デバイスとインフラ、そしてサービスが足並みを揃えることで、初めて真価が発揮される。慌ててデバイスを出荷しても、それだけでは、MIDを普及させることはできない」
来年春に開始されるWiMAXの商用サービスによって、ようやくMIDが利用できる環境が整うことになるのは明らかだ。その時点で、さらに多くの企業からも、MIDが投入されることになるとみられる。
インテルは、今後1年をかけて、MIDを取り巻く動きを業界全体へと波及させ、その動きをいかに加速できるかが鍵といえる。それは、端末を開発・生産・販売するベンダーとの連動だけではなく、インフラ企業、サービスプロバイダ、コンテンツプロバイダなどとの連携も含まれる。MIDならではのサービス創出も求められそうだ。
家庭向けのエンターテインメントコンピュータ「Viiv」では、インテルは同じようにコンテンツプロバイダなどとの連携に踏み出したが、成功には至らなかった経緯がある。その点でも、同社にとっては、MIDの普及戦略はリベンジといえるものになりそうだ。
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