大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>93.シャープ進出予定地で堺市が町名を募集
2008/04/14 18:44
週刊BCN 2008年04月14日vol.1231掲載
■新しい街のイメージを
もともとシャープが進出する堺市臨海部に位置する堺第2区は、高度成長期に臨海工業コンビナートとして造成され、町名は、立地した新日本製鐵にちなんで「築港八幡町(ちっこうやわたまち)」とされていた。だが、産業構造の変化にともなって、同社が撤退。発生した大規模な未利用地に、シャープが、ソニーとともに、液晶パネルの生産拠点として進出。さらに、液晶で利用する薄膜技術を活用した太陽電池の一大製造拠点をシャープが建設することになったという経緯がある。
シャープの片山幹雄社長が「21世紀型コンビナートとして、液晶、太陽電池を核に、業種、業態を越えた最大級の工場群を形成することになる」と語るように、127万平方メートルの敷地にパネル工場、太陽電池工場とともに、素材や部品、物流といった企業群も進出することになっている。
02年には、この地域が都市再生緊急整備地域に指定され、防災緑地の整備が始められているほか、商業アミューズメント施設の開設や、サッカーナショナルトレーニングセンターの整備、中小企業クラスターの形成など、「未来に開かれた新しい街づくりが着々と進んでいる」(堺市)という。
今回の町名募集は、築港八幡町のうち、堺浜新産業創出エリアの新町名を募集するもので、特定の企業名や商品名を使ったものとか、「堺浜町」など、すでに使われているものは無効となる。堺市では「堺から世界へ、新しい街のイメージを発信できるような町名を期待している」と意欲的だ。
愛知県の豊田市、大阪府池田市のダイハツ町、大阪府大東市三洋町などの例もあり、また、シャープが栃木県矢板市の事業所の町名が、同社創業者の名字である早川と一緒という例もある。堺市の取り組みはここまで踏み込まないにしても、地域活性化という観点から、シャープの進出に大きな期待をかけていることがわかる。
■第二の亀山ブランド誕生か
もちろん、シャープにとって、新たな町名がブランド戦略にプラス効果に働くことになるのは間違いない。残念ながら、「堺」のイメージは、どうしても20世紀型の旧式コンビナートを想像させ、一部関係者の間では懸念の声もあがっていたからだ。亀山ブランドを国内に浸透させ、世界戦略においても同様の施策を展開している同社が、新たな町名でブランド訴求するのは容易に想像できよう。
ソニーや東芝、パイオニアなど、この工場で生産されたパネルを利用して薄型テレビを製品化するメーカーも、共同戦線を張ることになるだろう。
課題があるとすれば、これまで培った亀山ブランドを陳腐化させないことくらいか。
いずれにしろ、シャープが新工場のブランド戦略を打ち出しやすくなるのは間違いない。大阪府そして堺市は、「堺」の名称とは別に、世界に通用する地域ブランドを手に入れることになりそうだ。
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