大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>92.Windows VistaのSP1が果たす役割とは?
2008/04/07 18:44
週刊BCN 2008年04月07日vol.1230掲載
■ベンダー側は消極的だが…
SP1は、Vistaの発売以降に公開されたアップデートや修正モジュールを集めたものだ。信頼性、互換性、性能の向上といった効果があるものの、自動更新しているユーザーにとっては新たに何かが追加されるわけではない。
かつてのWindowsXP SP2のときには、自動更新をしているユーザーもサービスパックをインストールする必要があり、これによってセキュリティ環境が大きく改善された。だが、Vista SP1ではそうした状況とは異なるため、マイクロソフトも当初は、SP1はユーザーに大きなインパクトを与えるものではないだろうと捉えていた。
ダウンロードセンターでの公開に続き、4月中旬以降に予定されているSP1の自動更新について、マイクロソフトが積極的な訴求活動をしていないのは、SP1が修正モジュールの集大成であり、自動更新を設定しているユーザーにはほとんど関係がないと判断していることが背景にある。
だが、SP1によって、Vistaの性能は大幅に向上する。ファイルのローカルコピーの速度は25%以上の高速化が図れるほか、SP1を適用したPC同士では、ファイルのコピー作業において、約50%の高速化ができるという。ビジネスシーンやコンシューマユーザーがよく利用する環境での改善を図っているのが特徴で、さらに快適な利用環境が実現できるとされている。
SP1の公開は、マイクロソフトにとって、Vista訴求のタイミングとして、大きな意味をもつ。
マイクロソフトには、昨年1月のVistaの発売以降、その購入を促進させるきっかけを作ることができなかったという反省がある。その点でも、SP1公開のタイミングは、Vistaの特色を訴求するきっかけづくりになるだろう。
■誤解を解く起爆剤に
マイクロソフトはこれまで、「VistaはXPに比べて短期間で高い互換性を達成した」と発表してきたが、初期の段階で、iTunesやAdobe Readerといった主要ソフトの動作に問題があるとの情報が広まったこと、オンラインゲームの動作確認が遅れたことなどで、ユーザーの間ではVistaの互換性の低さが取り沙汰される結果となっていた。その後の修正モジュールの公開によって、すでに、こうした課題は解決されているものの、なかなかそのイメージは改善されなかった。
つまり、SP1の公開によって、改めて互換性が大きく向上していることを訴えるきっかけがつくれるようになったともいえるのだ。 さらに、4月に入ると、夏モデルが主要PCメーカーから発表されることになる。Vista環境ならではの新たなサービスの提供も期待され、その点でもVistaの訴求には絶好のタイミングだ。
Vistaの発売以降、国内のPC市場は決して上向いているわけではない。その要因として、Vistaの良さが伝わっていないことや誤解が払拭できなかったことがあげられる。
SP1は、Vistaに改めて注目を集め、誤解を解くための手段となるはずだ。そして、北京オリンピック需要を引き寄せることにつながるとも期待される。
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