大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>88.レノボが提唱する「ワールドソーシング」とは
2008/03/10 18:44
週刊BCN 2008年03月10日vol.1226掲載
■リソースを横断的に活用
2月にレノボ・ジャパンが開いた「イノベーション・フォーラム2008“組織・人・IT”」でも、来日したレノボ・グループ社長兼CEOのウィリアム・アメリオ氏が、「イノベーションを生み出す“Worldsourcing(ワールドソーシング)”」をテーマに講演。ワールドソーシングへの取り組みを改めて強調してみせた。
アウトソーシングやオフショアといった観点でも、グローバルのリソースを活用した試みはある。だが、アメリオCEOは、「先進国でイノベーションを起こし、新興国で材料を調達し、新興国の低コストの労働力を活用するという仕組みがアウトソーシングであるのに対して、資源、機会、アイデアはどこにでも存在するという考え方のもとに、世界中のリソースを横断的に活用するという仕組みがワールドソーシングだ」と説明する。
レノボ自身がワールドソーシングの最先端企業だとする背景には、同社のユニークな経営体制があることを見逃せない。
レノボには本部といえる拠点がなく、エグゼクティブチームは10か国にまたがって拠点を構え、6大陸において開発、生産を行い、マーケティングハブはインドに置き、世界のマーケットに対応した施策を打っている。研究開発体制についても、大和(日本)、北京(中国)、ラーレイ(米国)の3か所を結んだレノボ・イノベーション・トライアングルによって24時間の開発体制が整っている。まさに、世界中のリソースを横断的に活用しているのだ。
レノボが全世界規模で過去最高の業績を更新し、日本においても増収増益を達成していることをみると、いまのところ、このビジネスモデルが成功していることが裏付けられる。
■地域特性の理解が不可欠
だが、ワールドソーシングにおける問題点もある。
コミュニケーションが鍵になるため、それを支えるITインフラが必要となること。各拠点が対等の関係で事業を行うことから、地域ごとに異なる多様性を理解したうえでの取り組みが不可欠だ。
「同じ言葉でも意味の違いがあることを理解することも大切。レノボ社内では、共通という言葉の理解が、地域によって差があったために、議論が4時間止まったこともあった。また、中国では電子メールで誉めるのでは敬意が伝わらないという文化もある」(アメリオCEO)と、レノボ社内での実例を示す。だが、続けてこうも語る。「壁を越える多くの努力を払っても、労力に見合うだけのメリットがある」。
自国で生産したものを海外で展開するインターナショナルカンパニーから、本社のコピーとなる海外法人を設置し、世界でビジネスを行うマルチナショナルコーポレーションを経て、いよいよその発展系となるGIE(Globally Integrated Enterprise)、あるいはワールドソーシングの経営手法が生まれている。ワールドソーシングは、グローバル企業が避けて通れない道となるのか。
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