大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>86.ソフトバンクがホワイト学割を仕掛ける理由

2008/02/25 18:44

週刊BCN 2008年02月25日vol.1224掲載

 ソフトバンクモバイルのホワイトプラン加入者数が、2月8日で1100万契約に達した。

 他のキャリアなどへの国内通話がホワイトプランの半額となる「Wホワイト」や、家族間の国内通話が無料になる「ホワイト家族24」の加入者も増加しており、これらのホワイトプラン向け割引サービスが、さらに加入を後押ししている。

■弱者のメリット生かす

 そして、学生向けの割引サービスとして2月1日から開始した「ホワイト学割」は、契約日から3年間にわたり、ホワイトプランの基本料金が無料となる仕組みが話題を呼んでいる。

 孫正義社長は、「ホワイト学割の数字については、まだ公表できる段階にない」とするものの、「初動はいい感触。認知の度合い、問い合わせなどの状況をみると、想定したよりも良さそうだ」と頬をゆるめる。

 大学4年生が3月に契約し、たとえ社会人になっても、3年間にわたって無料の恩恵を得られるという出血サービスの制度は、この3月に契約のピークが訪れるとみて、期待を寄せる。

 ホワイトプランは、ソフトバンクモバイルにとって、成長戦略の軸だ。孫社長も、「いまは、シェアを増やすことに力を割いている」と言い切る。ホワイト学割も、当然シェア拡大が狙いだ。

 「学生市場におけるソフトバンクのシェアは7%しかなく、残り93%のお客がターゲットとなる。他社がホワイト学割と同じことをやると、学生からの収入が激減する。当社は弱者のメリットとして、既存ユーザーがいないところに打って出た」と明言する。

■ネットマシン元年に向けて

 とはいえ、シェア拡大後の次の一手もすでに打ち始めている。

 それはインターネットを利用できる携帯電話端末の強化だ。

 「携帯電話事業は、お客様の数×客単価によって示される。シェアを拡大後のステップは、ARPU(加入者1人当たりの平均売上高)の拡大。なかでもデータARPUを拡大することが重要」と孫社長はみている。

 ソフトバンクのデータARPUは、他社に比べて低い状況にある。HSDPA対応機種や、フルブラウズができる大画面搭載機といったネットに最適化した端末を用意することで、データARPUの拡大につなげる下地づくりに余念がない。

 「これまで、携帯電話がインターネット端末になり得なかったのは、通信速度、画面のサイズ、CPUの速度という3つの問題があったため。それが解決される条件が揃うのが今年であり、今年はインターネットマシン元年になる。携帯を使ったインターネット利用が一気に増えていく」

 孫社長は、携帯電話についてインターネットの世界で勝負の決着をつけようとしている。

 「これからは、コンテンツ、ポータル、インフラという3つの領域が重要になるが、全世界を見回しても、フルセットで持っているのはソフトバンクだけ。だが、ソフトバンクはインターネットの会社。たまたま日本で携帯電話の事業をやっているだけだ」とする言葉からもそれは明確だ。

 ドコモ、auと戦うための舞台づくりが着々と進んでいる。
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