大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>85.国内電機、好調な決算に隠れる喜べない要素
2008/02/18 16:51
週刊BCN 2008年02月18日vol.1223掲載
勝ち組と称される松下電器産業、シャープは、いずれも過去最高水準の業績を達成。松下電器の営業利益率は7.1%となり、実に17年ぶりに7%台となった。ソニーも、懸案のテレビ事業について黒字化を達成。テレビ事業復活に、着実に歩を進めている。
■海外市場で苦戦
だが、細かく見てみると、決して手放しで喜べる状況ではない。 松下電器は、決算会見の席上、「プラズマテレビは当初計画の500万台を若干下回る可能性がある。また、液晶テレビも10-15%程度、計画を割り込む」として、薄型テレビの年間出荷台数を、事実上、下方修正した。
プラズマテレビの下方修正は、上期に北米市場向けにフルHD対応普及機の投入が遅れたことが影響したと説明。これで50万台程度の見込み違いが発生した。液晶テレビはパネル調達の遅れが原因だ。プラズマ500万台、液晶400万台という数字は、それぞれ450万台強、350万台程度となりそうだ。
誤算は松下電器だけではない。
シャープは、年初計画では、40インチ以上の構成比を4割以上にするとして、大画面化へのシフトを促進し、単価上昇、収益確保を見込んでいたが、第3四半期における40インチ以上の比率は23%。予想を大きく下回る結果となっている。連結業績数字では、減価償却制度の変更の影響があるものの、上期に海外事業の立ち上げの遅れも影響し、9か月間の連結業績は営業利益は6.0%減の1310億円、当期純利益は2.9%減の729億円とマイナス成長となっている。
テレビ事業を黒字化させたソニーにも不安材料がある。「第3四半期は、月に120-130万台を出荷しており、このレベルを維持すれば、いまの価格水準でも利益は出せる」と、ソニーの大根田伸行執行役EVP兼CFOは説明するが、テレビ事業の黒字額は、前年同期比69%減の40億円と前年同期を大幅に下回る。100万台以上を出荷しても、収益性が悪化するという問題に直面しているのだ。
■本格需要期を前に息切れか
2011年7月からの放送完全デジタル化を前に、日本では1億台規模の需要が見込まれる。また、北米では日本よりも早い09年には完全デジタル化が完了し、欧州でも06年に完了したオランダを皮切りに、各国で順次、完全デジタル化が進む。世界規模での薄型テレビ需要が見込まれるのだ。
だが、成長率の鈍化が国内ではみられ始めている。
BCNの調べによると、07年12月および08年1月の対前年成長率は、金額ベースでは、それぞれ8.7%増、13.4%増であったのに対して、前年実績は約25%増。とくに、プラズマテレビは、いずれも前年割れという厳しい状況だ。電機各社は、世界的需要の拡大にあわせ、垂直統合型と水平分業型に分かれたビジネスモデルをそれぞれ模索しはじめている。
だが、いずれにしても、本格需要期が訪れる前に、息切れしない体質の確立が、喫緊の課題となっている。
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