大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>84.KDDIが固定電話事業に投資する理由
2008/02/11 18:44
週刊BCN 2008年02月11日vol.1222掲載
先頃発表した2007年度9か月間の連結決算によると、固定電話事業の営業収益は前年同期比0.4%減の5343億円、営業損益は478億円の赤字、経常損益は474億円の赤字、当期純損失は300億円となった。
■携帯におんぶの固定電話
グループ外への売上高は3.0%増の増収だが、好調な全社業績は携帯電話事業に支えられている構図に変わりはない。実際、12月末時点でのメタルプラスの契約数は327万件。ひかりoneは70万契約となっている。
小野寺社長は、「ひかりoneの伸びは、想定したよりも低い。とくに、戸建てへの浸透が遅れている。ひかりoneに入らなくてはならないという明確な動機づけができていないのが原因」とした。それでも、KDDIは固定電話事業に対する積極的な投資の手綱を緩めるつもりはない。
東京電力の光ネットワークカンパニーの統合、JCNの連結子会社化などに加え、今年1月には、中部電力の光ファイバー事業を行う子会社の中部テレコミュニケーションを買収すると発表。4月1日付で中部電力が所有する株式の80.5%を約380億円で取得し、中部圏における光ファイバー事業の強化に乗り出す。
「中部テレコミュニケーションは、中部圏において7万2000kmの光ファイバー網を持ち、企業ユーザーの満足度が高く、また個人向けにも2007年末時点で12万回線の契約を持つ。将来的には、中部圏において30%のシェア獲得を目指したい」と意欲をみせる。
■自前のアクセスラインを確保
KDDIは、なぜここまで固定電話事業に対する投資に積極的なのだろうか。
小野寺社長は次のように語る。
「IP時代においては、サービス収入における固定系アクセスラインが占めるコスト比率が上昇する。その方向のなかで、アクセスラインを持つNTTへの依存度を低くするためにも、自前のアクセスラインを確保する必要がある」
NTTグループは光回線網で7割のシェアを持つ。この傾向が加速すれば、かつてのNTTの独占状態になりかねないとの懸念がKDDIにはある。
「すべての地域に、光によるアクセスラインを当社が自前で敷設するのは無理。しかし、地域通信事業者との提携によって、重要なエリアでは自前でアクセスラインを持つことに取り組みたい」
自ら積極的に買収を働きかけることはないとしながらも、「話をいただければ前向きに検討する」とコメントする。
もちろん、NTTに対して、安価な費用で利用できるように開放を求めていくことにも取り組んでいく。この点では、ソフトバンクとも足並みを揃えることになる。
「ソリューションをワンストップで提供できる体制構築は、2010年に向けた事業領域拡大への取り組みのひとつ。ICTをワンストップで提供できるオールラウンドプレイヤーを目指す」と小野寺社長は話す。IP時代のオールラウンドプレイヤーとしての地盤づくりには、主要地域におけるアクセスラインの確保が必要。だからこそ、KDDIは固定電話事業への投資を加速しているのである。
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