大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>83.EeePCは低価格市場を掘り起こせるか

2008/02/04 18:44

週刊BCN 2008年02月04日vol.1221掲載

 アスース・ジャパン(ASUS)が、EeePCの国内販売を開始した。同社では、モバイルインターネットデバイスとして、ノートPCとは一線を画す製品と位置づけ、これまでのPCユーザーとは異なる顧客層の開拓に挑む。

■ノートPCとは別カテゴリー

 同社は「(EeePCは)10歳以上の子供、主婦、高齢者などがターゲットになる」として、新規需要層の開拓をベースに、年間60万台の出荷を見込む。

 発売するEeePC 4G-Xの価格は4万9800円。CPUの詳細は明らかにしていないが、インテルモバイルと呼ばれるCPUを搭載。OSには、WindowsXP Home Edition(SP2)を採用、ディスクは4GBのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)。そして、800×480ドットの7インチTFT液晶パネル、メモリは512Mバイトと、現行ノートPCに比べてスペックの見劣りは否めない。

 「ノートPCとして比較されると、スペックの低さだけが浮き彫りにされる。だが、これは、モバイルインターネットデバイスという新たなカテゴリーの製品。むしろ、ノートPCと比較されないことが、EeePCのメリットを知っていただけることにつながる」と、コンシューマプロダクト担当アカウントマネージャー・謝青陵氏は、単純な比較が一人歩きすることに懸念を表明する。

 「インターネット時代において、新たなユーザー層、新たな用途、新たなビジネスモデルを創出することができるデバイス。ゲーム専用機ならWii、MP3プレーヤーならiPodといわれるように、モバイルインターネットデバイスならEee PCと呼ばれるようにしたい」と、同社では位置づける。EeePCのターゲットとされる子供、主婦、高齢者などは、これまでPCを所有していなかった層。いわば、新市場を開拓する考えだ。

■主婦に受け入れられるか

 昨年10月から出荷が始まっている台湾では、購入者の6割が女性という驚くべき結果が出ている。また、北米などでは教育機関における一括導入も発生しているという。

 鳴り物入りで国内に登場したEeePCに、業界は注目している。

 国内のPC市場は年間1400万台規模といわれるが、過去5年間はそれほど市場は拡大してはいない。ところが普及率が日本よりも高い米国市場では、過去5年間で60%以上も拡大している。

 その要因には、携帯電話によるメールの普及や、中小企業のPC導入の遅れなどが指摘されるが、低価格PC市場が存在しなかったことを理由にあげる関係者もいる。5万円を切る価格設定のEee PCが、国内のPC市場の活性化に貢献するかどうかが注目を集めているというわけだ。

 立ち上げ直後の販売店の反響は良好だ。これまでASUS製品を取り扱っていた店舗の約10倍にあたる500店舗での販売が行われる予定。さらに初期出荷数量として見込まれる1万台は、すぐに完売しそうな勢いだ。

 ただし、初期購入層はASUSが得意とするパワーユーザー層であるのは明らか。その点では、むしろこれからが本番。主婦や子供たちが使い始めたという声が聞かれるようなら、EeePCが日本でも威力を発揮することになるだろう。
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