大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>82.Vista後のマイクロソフトの反省点とは
2008/01/28 18:44
週刊BCN 2008年01月28日vol.1220掲載
この1年を振り返ると、Vistaが需要を喚起したとは言い難い。昨年12月はコンシューマ向けパソコン市場がやや回復基調にあるとはいえ、前年割れの状況を脱し切れてはいない。そして、それは今年に入っても変わっていない。
前年同月と比較してみると、Vista発売前は買い控えがあったといわれる時期。それなのに前年実績を下回っている状況にある。これはVistaがいまだに需要を顕在化できないことを示すものといえよう。
■一貫性と訴求力の欠如
マイクロソフトの業務執行役Windows本部・大場章弘本部長は、この1年を振り返り、2つの反省点があると語る。
ひとつは、製品訴求とシナリオ訴求が分離、Vistaの認知度とメリットおよび利用提案に一貫性がなかったことだ。
「前半はVistaの機能そのものの訴求に力を注いだ結果、利用シーンの提案が遅れた。一方、利用シーンを重視した後半は、Vistaそのものの訴求が課題となった」
もうひとつは、発売当初の互換性レベル、バグの存在などの情報がアップデートされず、Vistaの進化を訴えられなかったことだ。
「発売直後と比べると、Vistaの互換性が大幅に高まり、バグも修正されている。それにもかかわらず、安心して利用できる環境であることを訴えきれなかった」
昨年11月に記者会見を開き、バグの修正情報などを提供したのも、こうした反省があったからだ。サービスパック(SP)以外で、修正情報に関する会見を行ったのは、マイクロソフトにとっては異例。その点でも情報提供に関して、危機感があることを裏付けるものになっている。
■準備万端とは言い難く
マイクロソフトは1月下旬から2月にかけて、米国本社でミッドイヤーレビューを行う。ここで日本法人の今後半年間の方向性が決定する。
今後の施策の最終結論は、そのレビューを待たなくてはならないが、これまでの反省を踏まえ製品、技術といった観点からの訴求と、シナリオ訴求の両面からのプロモーションが同時並行的に行われるのは間違いなさそうだ。
「シナリオの訴求については、ウィンドウズデジタルライフスタイルコンソーシアム(WDLC)との連携によって、4つのシナリオから提案する。オリンピック需要を取り込むための仕掛けを展開し、パソコン売り場に顧客を誘導することにも力を注ぎたい」とする。
ただし、WDLCのシナリオ戦略に準拠し、セグメントをより明確化したパソコンの登場は、夏に発表される秋冬モデルまで待たなくてはならず、また、Vistaによる地上デジタル放送対応の実現は早くても年内になりそうだ。
そして、今年前半には、Vista SP1の登場が見込まれている。それを待って、Vistaの購入に踏み切ろうと考えている中小企業ユーザー、個人ユーザーも少なくない。
こうしてみると、準備万端とは言い難く、役者が揃うには、もう少し待たなくてはならないようだ。
2008年前半は、下期に向けた助走期間と捉え、しっかりと準備することに力を入れるべきではないだろうか。
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