大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>81.薄型テレビ、相次ぐ提携で勢力図が鮮明に

2008/01/21 16:51

週刊BCN 2008年01月21日vol.1219掲載

 2007年末に相次いで発表された薄型テレビを巡る提携は、緩やかに進んでいたグループ化に一気に拍車をかけた。

■心臓と顔を相互に供給

 「シャープ・東芝」の提携は、お互いが得意分野に投資を集中する。シャープは東芝からシステムLSIを調達し、半導体技術の弱点を補完。一方、東芝はマジョリティが取れなかったIPSアルファテクノロジから資本を引き揚げ、対抗するシャープから液晶パネルを調達する。パネル生産からは事実上撤退の決断を下した。

 薄型テレビの心臓部となるシステムLSIと、顔となる液晶パネルを相互に供給する提携は、まさに運命共同体。両社のパートナーシップは強力なものといえる。これにシャープが出資しているパイオニアの技術力が加わることで、陣営としての強みがさらに発揮されることになる。

 シャープは、大阪府堺市に建設中の新工場を21世紀型コンビナートと呼び、ここに材料メーカーなども進出させる。進出企業との緩やかな資本提携も視野にあるとされており、グループ化の前線基地となる。

■液晶に食指動かす松下

 一方、「松下電器産業・日立製作所・キヤノン」の提携は、松下電器が液晶テレビ事業に本腰を入れる体制ができた点で興味深い。

 大坪文雄社長は、「プラズマを軸に大画面市場を勝ち抜いていく戦略に変更はない」とするものの、09年にも建設が見込まれるIPSアルファの次期工場建設は、松下電器が中核となって行うことが明らかになっている。現在の第6世代に比べて、30インチ台のパネル生産を効率的に行える第7世代、あるいは第8世代を導入。新工場は、世界第2位の規模を誇る生産拠点になる可能性もある。

 また、07年からは37インチにまで広げてきた液晶テレビを、今回の提携を機に、40インチ台にまで広げる可能性は十分に考えられる。プラズマテレビが苦戦している地域において、液晶テレビを戦略的に投下するといったことも可能になるだろう。

 「多様化する市場ニーズのなかで、必要に応じて液晶テレビの大型化も推進する。今回の資本再編によって、液晶パネルにおいても、垂直統合モデルを確立できる」とする大坪社長の言葉からも、液晶テレビを今後の事業の柱のひとつに据える考えがあることは容易に想像できる。

 そして、これまで有機ELにまったく言及してこなかった松下電器が、今回の提携発表を機に、この事業の可能性に触れたのも興味深い。

 「有機ELテレビは、技術的に液晶パネルと共通する部分が多い。将来の展開を視野に入れることができるようになった」と大坪社長は語る。

 投入時期や具体的な商品化のプランは明らかにしなかったが、「有機ELテレビの投入までには、まだ時間的猶予があると考えている」として、すぐに商品化するつもりがないことを示している。慎重な姿勢でこの事業に取り組むことになるだろうが、テレビ事業の新たな選択肢を手に入れた形だ。 相次ぐ提携発表によって、勢力図は大きく変化した。08年は、薄型テレビの勢力図が、さらに鮮明になりそうだ。
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