大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>75.DVDレコーダーの需要が回復する理由
2007/11/26 16:51
週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載
昭和30年代の高度成長期において、「家電三種の神器」といわれたカラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機になぞらえて、デジタル時代をけん引する薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラの3つを指した言葉だ。
その3つの製品のなかで、ここ数年、需要が低迷していたのがDVDレコーダーである。
薄型テレビの国内需要は、今年度は年間900万台に到達する勢いをみせ、デジカメも1000万台を突破することがほぼ確実になっている。それに対して、DVDレコーダーは年間約400万台の規模。かつてのVTR時代には、年間700万台規模の市場があったことと比べても、落ち込みは深刻だ。
■買い控えを起こす要因は
デジタル三種の神器の一角を占めるDVDレコーダーの需要は、なぜ低迷していたのか。
それにはいくつかの理由がある。ひとつは、既存のDVDレコーダーでは、フルハイビジョン録画に限界があったことが見逃せない。薄型テレビはフルハイビジョン画質であるにもかかわらず、DVDディスクには容量の限界があり、ハイビジョン録画は事実上不可能だ。もちろん、ハードディスクに録画するという手もあるが、日本のユーザーの多くは、ライブラリー化が可能なディスク搭載機に目が向く。ハードディスクだけを搭載したレコーダーが成功していない現状からもそれがわかる。
もうひとつの理由は、次世代光ディスクレコーダーが高価であること、そして、規格争いの行方が不透明であることがあげられる。デジタル家電の価格下落は、年を追うごとに進む。10万円を切るタイミングをにらんでいたユーザーも少なくないだろう。次世代光ディスクを巡る買い控えが発生していたともみることができる。
■手頃な価格帯で需要喚起
だが、年末商戦では、こうした数々の問題が解決しつつある。
DVDディスクへのフルハイビジョン録画に関しては、松下電器産業や東芝などが採用したMPEG4による圧縮技術によって、画質をほとんど劣化させることなく、長時間録画ができるようになった。松下電器では、MPEG4 AVCエンコーダ技術により、4倍の長時間録画を実現。DVDディスクでも、約3時間のフルハイビジョン録画が可能になる。
また、次世代光ディスクレコーダーが、手の届きやすい価格帯に入ってきたことも大きな要素だ。この年末商戦からレコーダー新製品をBlu-rayに一本化したソニーは、最下位モデルの市場価格を14万円前後に設定。年明けには10万円を切る実売価格になると見込まれる。また、シャープはハードディスクを搭載しないBlu-rayレコーダーを10万円を切る価格設定で売り出す。東芝も同様に、10万円を切るHD DVD/HDDレコーダーを市場投入する。
各社ともDVDレコーダーの中位機と同等の価格帯の製品をラインアップすることで、次世代光ディスク待ちだったユーザーを獲得する考えだ。
かつてのVTR時代に比べて低調だったDVDレコーダー市場。今年の年末商戦をきっかけに、「正常」な市場規模に戻るかどうかに注目が集まる。
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