大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>73.日立の薄型テレビ事業の改善策は

2007/11/12 18:44

週刊BCN 2007年11月12日vol.1211掲載

 日立製作所の薄型テレビ事業が苦戦を強いられている。

 先頃発表した薄型テレビを含むデジタルメディア・民生機器事業の上期連結売上高は、4%減の7280億円、営業損失は前年同期の344億円の赤字幅を拡大し、508億円の赤字となった。

■北米市場の不振が響く

 「デジタルメディア・民生機器事業の不振の理由は、薄型テレビ事業に尽きる」と財務担当の中村豊明執行役専務は語る。

 数字上では、上期のプラズマテレビの出荷台数は28%増の41万台、液晶テレビは50%増の30万台と、いずれも前年実績を大きく上回っている。

 「中小型の薄型テレビは比較的順調であり、台数では実績を残している。しかし、北米での大画面テレビの売れ行きが、計画の半分程度にとどまっていることが響いた」ようだ。

 同社では、北米市場を中心として、プラズマテレビの特徴が生かせる50インチ以上の大画面テレビの比重を高める戦略を掲げていた。上期はそれが裏目に出たともいえる。

 デジタルメディア・民生機器の通期事業目標は、売上高が2%増の1兆5300億円とするものの、営業損失は、前期の584億円から赤字が拡大し、720億円を見込まざるを得ない。上期の損失がそのまま通期業績にも響く格好だ。

■新製品投入と操業率の改善

 「黒字転換は、来年のどこかのタイミングになる」と、中村執行役専務は来期の巻き返しに意欲をみせる。

 その点でも、今年度下期における回復に向けた地盤づくりが大切であり、日立は、すでにいくつかの手を打ち始めている。

 ひとつは、薄さ35mmを実現した液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」の投入だ。10月末の製品発表会見では、12月中旬の出荷を予定していたが「12月初旬には出荷する」と前倒しで投入する考えだ。

 同社では、プラズマテレビの年間出荷計画を10万台減の120万台(前年比56%増)とする一方、液晶テレビの出荷計画は5万台増の80万台(同58%増)とするが、「これは、超薄型液晶テレビに対する期待を込めたもの」だ。

 さらに、来年1月に米国で開催されるCESで、超薄型のプラズマテレビを展示する予定を明らかにした。発売時期や価格などは未定だが、薄型化で出遅れたプラズマテレビで、いち早く薄型対応を図る考えだ。

 また、プラズマパネルを生産する富士通日立プラズマディスプレイ宮崎事業所において、二番館の操業を停止。高効率設備を有する三番館へと生産を集約した。現在の操業率は約7割と採算点を維持するには厳しい状況だが、「11月からは、これまで行っていなかった外販を始める。まずは中国のセットメーカーに納める」方針だ。

 操業率の改善が、デジタルメディア・民生機器の業績を左右するのは明らかだ。加えて、材料費低減や固定費削減などの取り組みを継続するほか、松下電器産業との提携を強化し、大型パネルの相互供給、部材の共通化、ガラス厚の統一などに加え、共同販促キャンペーンも行う考えだ。

 この下期に、どこまで体制を立て直すことができるかが、来年度の黒字化の布石になる。
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