大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>71.KDDIとソニーの連携はアップル対抗か
2007/10/29 18:44
週刊BCN 2007年10月29日vol.1209掲載
■連携メリット幅広い
KDDIが提供してきたLISMOの機能を拡張することにより、携帯電話でダウンロードした「着うたフル」をパソコンに加えて、HDD搭載コンポ「ネットジューク」でもバックアップできるようにしたほか、バックアップした着うたフルのデータは、ウォークマンに転送して持ち運んで楽しむことが可能になる。さらに、CDから取り込んだ楽曲や、サニーが出資しているレーベルゲートが提供するパソコン向け音楽配信サービス「mora」、家庭向けのオーディオ機器向けの音楽配信サービスである「Any Music」で購入したATRAC形式の楽曲を携帯電話およびウォークマンに転送して楽しむことができるようになる。
KDDIは、携帯電話に加えて、パソコンとの連動までを実現していたが、今回の提携によってオーディオ機器までの連動を実現。「従来の枠組みを越えて、もっと音楽を自由に楽しめる環境の実現と普及を目指す」としている。
また、ソニーにとっても携帯電話向けに提供されていた「着うたフル」が、ウォークマンで利用できるようになるメリットは大きい。日本では、音楽配信市場の大半を携帯電話が占める。これがウォークマンでも活用できるほか、音楽の一元管理ができるようになるメリットは、ユーザーにとっては魅力的だろう。
■iPhone上陸が新たな対立軸
だが、今回の提携の背景にはアップルへの対抗措置があるのは明らかだ。アップルは2008年以降、米国市場以外にもiPhoneを投入する計画を明らかにしている。当然、日本市場も含まれる。
アップルが正式表明しているわけではないが、第3世代の通信方式として、auが採用しているCDMA2000ではなく、NTTドコモおよびソフトバンクモバイルが採用しているW-CDMAを採用する公算が高い。
となれば、NTTドコモおよびソフトバンクモバイルの両社は、iPhoneという強力な武器を得て、携帯電話市場において音楽で先行したauを一気にキャッチアップできることになる。
今年6月のNTTドコモの株主総会では、iPhoneに関する株主の質問に対して、辻村清行取締役常務執行役員が、「現在のiPhoneはGSMであるため、日本ではこの方式は使えない。だが、ドコモが提供しているW-CDMA方式への対応を期待しており、可能であればドコモにも入れたい。アップルとの話し合いになるが、重要なものとして検討していきたい」とコメント。導入に前向きな意欲をみせている。
今回のKDDIとソニーの提携は、こうしたiPodおよびiPhone、そしてiTunes Storeという両社共通の競合相手に向けた対抗策といっていい。
来年にも日本市場への投入が想定されるiPhoneへの対策が、早くも始まっているともいえる。KDDIとソニーにとっては、避けては通れないものだけに、今後の対策にも注目が集まる。
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