大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>67.放送デジタル化はPC業界に追い風

2007/10/01 16:51

週刊BCN 2007年10月01日vol.1205掲載

 デジタル放送への完全移行が実施される2011年7月まで、あと4年となった。

 総務省では、今後の普及を加速するため、このほど地上デジタル放送総合対策本部を同省内に設置。総務大臣を本部長とし、地上デジタル放送の普及に向けた整備促進、啓蒙活動を計画的に行っていくことを示した。

■全テレビのデジタル化は無理!?

 今年8月時点の地上デジタル放送受信機の普及台数は2428万台。そのうちチューナー内蔵プラズマテレビおよび液晶テレビは1445万台だった。総務省では、「地上デジタル放送は、計画どおりに進捗している」とするが、業界内には、2011年のデジタル放送の完全移行時までに、すべてのテレビをデジタル化するのは難しいのではないか、との懸念があるのも事実だ。

 いまや、家庭のなかに複数台のテレビがあるのは珍しくない。

 4300万世帯に1億2000万台のテレビが普及している状況から逆算すると、単純計算で約8000万台が2台目以降のテレビということになる。その環境において、リビングの大型テレビはデジタル化しても、書斎や個人の部屋にあるすべてのテレビをデジタル化するには時間が足りないとの見方があるのだ。

 シャープによると、07年度には薄型テレビの世帯保有率が約52%に達すると予測する。しかし、1億2000万台からみると、薄型テレビの普及率はまだ10%強でしかない。テレビの総需要の60%以上が21インチ以下という状況からすれば、大画面テレビに需要が集中する現在の動きをみても、書斎などに設置する小型テレビのデジタル化が遅れているのは明らかである。

■PCでテレビ視聴という選択肢

 実は、ここにPC業界にとって大きなビジネスチャンスがある。

 PCの世帯普及率は約70%といわれている。4300万世帯という数値から逆算すれば、約3000万台のPCが家庭で利用されていることになる。これらのPCは、毎年、約500万台ずつのペースで買い替え、買い増しが行われている。この需要を、家庭における2台目以降の地上デジタル放送視聴用機器として訴求することで、さらに加速することはできないだろうか。

 日本テレビ放送網編成局デジタルコンテンツセンターの田村和人センター長は、次のように語る。

 「放送局にとっては、テレビにとどまらず、PCであれ、携帯電話であれ、視聴する機会が増えることは歓迎したい。むしろ、2011年にデジタル放送を視聴できない人がいることのほうが問題。PCでテレビを視聴するというスタイルは、2台目以降のデジタルテレビの普及を補完する役割を担うものと期待している」

 現時点では、正式表明はないが、Windows Vistaでのフルセグ対応は時間の問題だといわれている。また、それでなくとも、国産PCメーカー各社から、デジタル放送の視聴が可能なPCが相次いで投入され、それはノートPCの世界にも広がっている。

 2011年の完全デジタル化は、PC業界にとって大きなチャンス。これを業界をあげて生かさない手はない。もっと大きく声をあげるべきだ。
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