大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>60.NECの矢野社長が約束した「回復」の意味
2007/08/06 18:44
週刊BCN 2007年08月06日vol.1198掲載
矢野社長が約束した「回復」とは、数字の面でいえば、矢野社長自身が成長指標としている連結営業利益において、ほぼ倍増となる1300億円を達成すること。そして、前年度に赤字脱却がならなかった半導体事業における黒字化、下期から回復基調にあるモバイルターミナル事業の通期黒字化、成長領域としているNGN関連事業における2000億円の売り上げ獲得ということになる。
■携帯の成功をPCにも
このなかで、モバイルターミナル事業は、すでに前年度下期から回復基調へと転じ、07年度の黒字化は早くも射程圏内に入ったといっていい。
矢野社長も、「海外から一刻も早く撤退することと、美しいデザインの携帯電話を作ってほしいということを言い続けてきた。ここにきて、ようやくNECらしいものが出てきた」と自己評価する。
手放しで評価する携帯電話と並んで、NECのもうひとつのブランドの顔となるのがPC事業だ。
これまでの社長会見では、PC事業についてほとんど触れてこなかった矢野社長が、今回の会見では、PC事業に関して言及。
「PC事業は絶対にやめることはない」と宣言するとともに、同事業における黒字の定着化と新たな成長事業の創出を掲げ、ホームサーバーを中心とした新パーソナルソリューション製品、ホームゲートウェイなどのホームネットワーク製品の投入計画を明らかにした。
ホームサーバーは、今年秋にも発表する予定で、「NECならではのホームサーバーを投入していく計画」として、携帯電話で実現したNECらしさを、PC製品にも拡大していく姿勢を示した。
当然のことながら、こうした新たな製品群と、NGNとの連動、BIGLOBEとの連動提案が、NECらしい提案に直結することになる。
■まずは今年度の達成を確実に
だが、こうしたNECらしい製品の創出や、技術的な特徴が打ち出される一方で、矢野社長は、NECが持つ体質的な問題点にも触れた。
「NECの悪いところは、とことんやり抜く姿勢が足りないこと」と言い切る。
そして「立てる計画に甘さがあるという悪い部分がある。実行段階では、粘っこさと、しぶとさが足りない。その結果として、計画倒れに終わることもある。絶対に実行する、継続する強さが必要だ。社員に言っているのは、決めた目標をとことんまでやり通す、そういう文化をつくりたいということだ」というのだ。
その矢野社長自身も、06年度の目標として掲げた営業利益1100億円は、実績で700億円にとどまり、目標には到達しなかった。
記者会見の当日、「今日は、将来の夢の話はしない。まずは足下の07年度に結果を出すことが大切だ。それができない限り信頼は回復しない。今年はこれだけやるということを示し、それをやり遂げる決意を表明する」として、中期計画には一切触れず、07年度の計画だけに終始した。
「回復」の表明は、「とことんやり遂げるNECへの脱皮」を自ら宣言するものだといえよう。
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