店頭流通
キングソフト セキュリティソフトを無償配布
2007/07/30 18:45
週刊BCN 2007年07月30日vol.1197掲載
ソフトを広告メディアとして展開
キングソフトは主にダウンロードによってユーザーの獲得を図っている。2005年9月から「Kingsoft Internet Security(キングソフトインターネットセキュリティ) 2006」を発売、1年間無償提供し、2年目以降は更新料を980円にする戦略で、提供5か月めにして、100万本のダウンロードを達成した。現在までに「キングソフトインターネットセキュリティ」シリーズは延べ200万インストールに上る。今年6月には初のパッケージ製品として3台PC対応、更新料無料の「キングソフトインターネットセキュリティ 0×3(ゼロバイスリー)」を3880円で発売した。
セキュリティソフト市場の規模は約600億円とされる。現在4000億円ほどの規模を有するインターネット広告の市場は拡大を続けており、ラジオ広告市場を上回った。キングソフトは、法人販売など従来型のソフトウェア販売モデルを残す一方で新たに「広告収益モデル」に着目。セキュリティソフトの市場600億円に加え、ソフト自体を一つの広告メディアとして活用することで、4000億円の市場が開けると見通す。
■広告配信と配布で協業
無料型広告モデル「キングソフトインターネットセキュリティ フリー」を提供するに当たり、コンテンツマッチング広告配信のオーバーチュア、アフィリエイト広告の大手、リンクシェア・ジャパンを広告パートナーとして提携した。また、楽天、エキサイト、フルキャストマーケティング、GMOメディア、凸版印刷、未来検索ブラジルほか数社と、同ソフトを配布するアライアンスを組んだ。
アライアンスパートナーは自社の持つポータルサイトやフリーDVDマガジンなどのメディアから同ソフトを配布する。その場合、メイン画面上部に各アライアンスパートナーのロゴ(バナー広告)などを掲載する。
パターンアップロード時に立ち上がるポップアップ画面には、ユーザーがインストール時に入力したプロフィール(地域、性別、年齢層、職業)からオーバーチュア、リンクシェアがそれぞれユーザー属性にあった広告を配信する仕組み。
広沢社長は「基本は広告を掲載する無期限無料ソフト。だが、一部ソフトを使用するにあたり、広告が載っているソフトを拒むユーザーもあるため、有料版自体は引き続き残していく」としている。ただ、パッケージ販売についてはもともとダウンロードが中心であるため、「微妙な選択」と話す。今後の展開によっては販売を控える可能性があることを示唆した。
■広告収益は、吉か、凶か
現在同ソフトは1日約3回の更新頻度だが、「年内には1時間に1回の更新頻度に高めていきたい」(沈海寅取締役)方針だ。広告収益モデルの発表会見では、「1日24回も広告がポップアップされるとわずらわしくないのか」「広告収益を軸にするならば、ユーザーが広告に対するアクションをしない限り収益につながらないのではないか」との質問も飛んだ。広告は提供の仕方によっては不快に感じるユーザーもいることは確かで、また、収益に結びつけるためにユーザー数を引き上げていく必要があるだろう。同社では、「アライアンスパートナー」をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や音楽サイトなど幅広く募っていく方針で、3年後には500万ユーザーを目指す。
「更新料無料、複数台対応」の製品は、ソースネクストを皮切りに、各社がこぞって参入してきた領域でもあるが、やはり先陣を切ったソースネクストが強みを発揮している。
こうしたなか、キングソフトはこれまで有料として売ってきた製品を広告収益で無償提供して、大手のポータルサイトなどを持つさまざまな企業を配布パートナーとして囲い込んだ。また、同ソフトを販促品やノベルティとしても配布できるよう、OEMモデルなども考えているようだ。
広沢社長は「これはうちが1番はじめに取り組み始めたビジネスモデルで2番手、3番手ではない。ビジネスモデルは1番最初に開拓したものが強い」との見解を示す。果たして広告収益のビジネスモデルは吉とでるか、凶とでるか。
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