大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>58.個人向けPCのブランドを統一したデルの本音

2007/07/23 18:44

週刊BCN 2007年07月23日vol.1196掲載

 デルが、個人向けPCのメインストリームブランドを一本化した。

 従来は、「Demention」と「Inspiron」の2つのブランドに分けていたものを、Inspironに一本化。さらに、Inspironのロゴを一新して、「YOURS IS HERE」というメッセージとともに、新たな提案を開始。ノートPCでは、デルとしては初めてとなる8色のカラーバリエーションを採用するなど、個人向けPC事業を大きく転換した。

■混乱招く複数のブランド

 今回のブランド一本化は、ワールドワイドで行われたものだ。デルの個人向けPCには、DementionおよびInspironのほかに、プレミアムブランドのXPSや、エイリアンウェアブランドによるゲーマー向けPCがある。そのなかで、メインストリームのDementionおよびInspironの棲み分けが、世界的にも難しくなっていたのが理由だ。

 「日本では、DementionはデスクトップPCのブランド、Inspironは、ノートPCのブランドだと誤解している人もいる。複数のブランドがあることで、ラインアップが煩雑となり、ユーザーにメッセージが届きにくいという課題もあった。今回の一本化によって、ブランドメッセージを強く、効果的に訴えることができ、デルが提案するライフスタイルを訴求することもできる」と、同社クライアント製品マーケティング本部・中島耕一郎本部長は語る。

■日本市場を強く意識

 今回のデルの個人向けPC戦略で見逃すことができないのが、日本へのフォーカスをさらに強める手を打ち始めた点である。

 これまで、デルの戦略は、世界統一戦略が基本となっていた。そのため、市場規模が1割程度にとどまる日本独自の要求がなかなか製品に反映されない仕組みとなっていた。

 しかし、ここにきてデルの考え方は大きく転換している。「主要地域で一番になるためにやらなくてはならないことは何か」というスタンスに変化しているからだ。

 当然、日本は主要地域のひとつに位置づけられる。実は、今回の個人向けメインストリームブランドの記者会見も、日本独自の「遊び」要素が加えられている。

 東京・表参道のスパイラルホールで行われた会見は、ファッションショーさながらのものとなった。8色のカラーを施した新ノートPCのファッショナブル性を訴えるためには、この手法が最適と日本法人が判断したためだ。これまで、コスト追求のスタンスをとっていたデルを知る人からすれば、これらの会見の手法は、まさに、「デルらしくない」ものだった。

 こうした日本市場にフォーカスした動きは、これから加速するのは明らかだ。今回の製品発表にあわせて、中国・大連に設置した日本のユーザー向けコールセンターを24時間365日対応としたのも、日本の顧客満足度上昇に向けた施策である。今後は、日本独自の要求にあわせたオールインワンPCの出荷も予定されている。そして、日本市場から強い要求がある地上デジタル放送対応も含まれることは容易に予想できよう。

 Inspironへのブランド一本化は単なるブランド戦略ではない。個人向けPC事業を根底から変えるという考え方がベースにあることを見逃してはならない。
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