大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>48.日本独自の展開に乗り出すデルの本気

2007/05/14 18:44

週刊BCN 2007年05月14日vol.1186掲載

 デルは、2007年2月からスタートした新年度において、「Dell 2.0 Japan」を事業方針の柱に掲げた。

 昨年、米国本社が掲げたDell 2.0を日本市場向けに展開するものだが、基本的な骨子は、米国本社のそれと変わらない。

 これまでの箱売り中心のビジネスから、サービスを中心とした付加価値ソリューションの提供に力を注ぐ。これを軸に、(1)顧客とのダイレクトな関係によるメリットを最大限に活用(2)顧客との関係強化と製品ライフサイクルを通じた価値を提供(3)価格競争力に加えて製品、ソリューション、サービスといった付加価値を高め、顧客満足度を最大化(4)多様化する顧客ニーズに対して、カスタマイズしたソリューションを提供する、といった4点に取り組む。

 同時にエンタープライズ、サービス、ソフトウェア/周辺機器、コンシューマといった多様化するデルの事業領域をバランスよく成長させることも目指す。

■エリア戦略を明確に打ち出す

 こうした大きな方向転換を図る一方で、デルはもうひとつの方針転換を推し進める。それはエリア別の戦略を明確に打ち出したことだ。

 デルは先頃、中国市場向けに、中国でデザインし、現地生産する低価格PCの投入を明らかにした。

 Dell EC280と呼ばれるこの低価格デスクトップ製品は、従来、ひとつのグローバルモデルを開発・生産し、それを全世界規模で流通してきたデルにとって、個別市場の要求に応えた初の製品となる。中国での実績をみながら、インドなどの成長市場に対して横展開することも視野に入れている。

 一方、英国法人では、エンタープライズ関連企業を独自に買収し、同事業の地盤をつくるといった動きがみられた。これもエリア別戦略のひとつといえよう。

 実は、この取り組みが日本にも波及しようとしている。

■買収により独自サービス強化

 ひとつは、日本におけるエンタープライズ事業、サービス事業強化の一環として、サービス関連企業を日本法人独自で買収するという方針を明確に掲げたことだ。  日本法人のジム・メリット社長は、「現時点で具体的な計画があるわけではないが、デルが日本でエンタープライズ事業を強化するうえで、必要だと思われるものに関しては積極的に展開していくことになる。買収する価値があると判断したら検討したい」と語る。

 その一方で、日本市場の要求を取り入れ、軽量化を追求したノートPCも、今年後半には投入する公算が強い。マイケル・デルCEOは、軽量化という点では、日本の要求を満たした製品こそが、全世界で受け入れられると判断しているようだ。

 この5月から就任2年目に突入したジム・メリット社長も、「この1年間の経験で、日本市場を対象とした固有の製品が必要であることを実感している。日本の顧客の用途を考え、専門に開発した製品の投入は、デルにとっても重要な価値をもたらすことになるだろう」と語る。

 デルモデルは、Dell 2.0で大きく変化しようとしている。そのなかでも、エリア別展開は、隠れたデルモデルの転換だといえる。日本市場への訴求が、さらに加速することになる。
  • 1