大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>47.モバイルPCを激変させるPenrynの衝撃

2007/05/07 16:51

週刊BCN 2007年05月07日vol.1185掲載

 インテルが、ノートPCの次期プラットフォームである「Santa Rosa」(開発コードネーム)を発表した。

 同社では、企業向けノートPCプラットフォームのCentrino Proを先行して発表。同プラットフォームでは、バッテリー駆動時間を約2割拡張できるほか、802.11nという新たな無線LAN規格の利用も可能となる。さらには、Robsonテクノロジー(開発コードネーム)により、OSやアプリケーションの起動にかかる時間もわずか数秒にまで短縮できる。

 新プラットフォームによってノートPCは大きく変わる。社外を飛び回るビジネスマンにとって、バッテリー駆動時間やLAN機能の拡張は強い味方となる。

■電子辞書サイズのPCが出現

 だが、インテルは、さらにモバイル環境を大きく進化させる技術を用意している。

 それが、次期CPU「Penryn(ペンリン)」ファミリーである。

 最先端の45nmプロセス(現行65nmプロセス)で製造されるPenrynは、昨年発表したCore 2マイクロアーキテクチャーをベースに開発されるCPUだ。107平方㎜のダイサイズに、4億1000万個のトランジスタを搭載し、新命令セット「SSE4」を実装している。

 CPUの技術的な詳細は、専門誌などに譲るが、この革新的なCPUによって、パフォーマンスが3-4割も向上する一方、消費電力を大幅に削減することが可能になり、発熱量も抑えることができる。

 インテルの吉田和正共同社長は、「Penrynによって、8インチの液晶を搭載したような、電子辞書サイズのPCも実現できる。PCの形そのものを変化させることができるCPU」と位置づける。

 これを補足するように、東芝の西田厚聰社長は、中期経営計画の会見で、「モバイルで先行している携帯電話の弱点は、インターネットの利用。いま、低消費電力化したCPUをインテルが用意しており、近い将来には、PCの機能を、携帯電話のサイズに入れることが可能になる」として、Penryn搭載製品の登場を匂わせる。

■PCの逆襲なるか

 Penrynは、今年後半から生産が開始され、来年前半にはそれを搭載したPCが登場することになるだろう。

 さらに、今年後半から来年にかけて、いよいよWiMAX(ワイマックス)が立ち上がる。WiMAXは、光・メタル回線の敷設やDSLなどの利用が困難な地域での接続手段として期待されている無線通信技術の規格のひとつだ。これまで数十メートルの範囲しかカバーできなかった無線LANとは異なり、WiMAXは1つのポイントで10km程度をカバーする。都内であれば、街の至るところで高速ブロードバンドを利用できる環境が整えられる。

 Santa RosaとPenrynによる軽くて薄い次世代PCと、WiMAXとの組み合わせで、モバイル環境は、現在とは比べものにならないほど進化する。モバイル環境におけるPCの巻き返しが本格的に始まるのだ。

 システムインテグレータやコンテンツホルダー、そして販売店は、どのようなビジネスチャンスが生まれる可能性があるかをいまから探っておくべきだろう。
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