大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>46.日本HPが持つコンシューマPC事業の隠し玉とは?

2007/04/23 18:44

週刊BCN 2007年04月23日vol.1184掲載

 日本ヒューレット・パッカード(HP)が、4年ぶりに日本のコンシューマビジネスに再参入して、約1か月半が経過した。

 大日本印刷の個人情報漏えい事件に同社の顧客データが含まれていたことから、再参入宣言の1週間後から7日間にわたり、広告活動を自粛する事態に陥ったことは、コンシューマ事業担当者にしてみれば痛い誤算だった。しかし、それでも一部のデスクトップパソコンが品切れになるなど、出足は順調だったといっていい。

■ノートPCが4倍の売れ行き

 「コンパクトタワータイプのs3000シリーズは、当初4割程度の構成比とみていたものが、結果として6割を占めた。東京・昭島で生産するMADE IN TOKYOの仕組みにより、5日間の納期を前提としていたために、部品が調達できない期間は、直販サイトには品切れと表示せざるを得なかった」とパーソナルシステムズ事業統括・岡隆史取締役副社長執行役員は残念がる。5日間の納期指定がなければ、品切れ表示をせずに、機会損失を最小限に抑えられたかもしれない。しかし、その点は直販の柔軟性を生かして、スリムタワータイプのv7000シリーズに誘導するキャンペーンを打つなどのリカバリーに抜かりはなかった。

 興味深いのは、3月には新製品投入がなかったノートPCが、好調な売れ行きを見せたことだ。

 今年1月の実績に比べ、Vista搭載PCが貢献した2月にはその2倍に、コンシューマPC市場への再参入を発表した3月にはさらにその2倍の販売実績となった。3月のノートPCの販売実績は、1月の4倍規模に達しているのである。

 「デスクトップPCの投入によって、コンシューマPCにおける当社の露出度が高まった。また、新たに開始したビックカメラ店頭で、ノートPCの実機を体験することができるHP Directplus Stationの設置もプラスに働いている」と、同社では分析している。

■有望商材を豊富に抱える

 コンシューマPCのラインアップは、ノートPCで4機種、デスクトップで2機種。地デジ対応モデルがないという弱点を抱えている。また、販売ルートも、ウェブと電話による直販に限定するなど、体制はまだ十分とはいいがたい。岡副社長も、「コンシューマPC事業で戦うという点での充足度は65%程度だろう」と語る。

 だが、日本HPが隠し持っている玉は少なくない。

 今年1月に開催されたCESに出品した「TouchSmart PC」は、Vista時代における日本HPのコンシューマPC事業のメッセージを込めた戦略的製品ともいえるが、日本への投入時期はまだ明らかになっていない。また、昨年9月に買収したVoodooPCによるハイエンドゲーマー向けPCの日本市場投入も未定。これも同社のコンシューマPC事業の象徴的製品になるのは間違いない。

 そのほか、プレサリオブランドによるコンシューマPCや、薄型テレビなどの家電製品も欧米ではラインアップしており、これらを日本に持ってくることも可能だ。

 そして、間接販売ルートにどのタイミングで参入してくるのかも気になるところだ。

 多くの隠し玉を持っている同社が、これからどんな手を打ってくるか、目が離せない。
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