大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>43.遅れている教育現場のIT活用
2007/04/02 16:51
週刊BCN 2007年04月02日vol.1181掲載
政府は毎年、コンピュータを使って指導できる教員の割合を調査している。e-Japan戦略では2006年3月までに、おおむね100%の教員が指導できることを掲げたが、結果としては76.8%にとどまり、10年度を最終年度とするIT新改革戦略で、改めて100%の到達成を目標に示している。
今年度以降の同調査には、このほど公表されたチェックリストが活用されることになる。これまでは「指導できるとの条件が曖昧」とされていただけに、細かな項目を設けた新たなチェックリストによって、指導できる教員の比率が来年度以降は低下することも考えられるのだ。
■軒並み目標値を下回る
日本の教育現場におけるIT活用は、欧米に比べて大幅に遅れているといわざるを得ない。先に触れたPCを使って指導できる教員が計画通りに増えていないことに加え、e-Japan戦略で掲げた整備計画も目標を達成できないままだ。
06年3月時点のコンピュータ整備率は、児童生徒7.7人に1台(e-Japan戦略の目標は5.4人に1台)、高速インターネットの接続率は89.1%(おおむね100%)、校内LAN整備率に至っては50.6%(おおむね100%)という状況だ。
IT新改革戦略では児童生徒3.6人に1台の目標をはじめ、光ファイバーによる超高速インターネットと校内LAN整備率で改めて100%の目標を掲げるとともに、新たに教員に1人1台環境を整備し、PCを校務にも活用する目標が明確に掲げられている。
06年3月時点で教員へのPC配備率は33.4%。約90万人の公立学校教員のうち53%にあたる約50万人が個人所有のPCを使用しており、個人情報保護や情報セキュリティを確保するうえでも問題視されている。
■企業に比べ5年以上の遅れ
企業で1人1台のPC環境が整っているのに比べて、教員を取り巻く環境は少なくとも5年以上の遅れがある。だが、大きな問題は依然として整備に議論が集中し、IT導入による教育効果を研究する段階から、依然として抜け出せていないことだ。
国立大学法人富山大学人間発達科学部長の山西潤一教授は「英国の教育関係者は、すでに教育効果を推し量る段階は終わり、いまはITを活用した教育効果をより高めるためには何をすべきか、といった議論に移行している」と指摘する。
英国や米国などでは、IT活用での教育効果に関する研究結果が数多く発表されている。効果的な学習によって、ITを活用した生徒とそうでない生徒との間に成績の差が出たり、学習意欲を高めることで欠席数、遅刻数、罰則数が劇的に減少した例もある。もちろん、日本でも同様の研究結果が出ている。
IT導入効果が明らかであるにもかかわらず、PCの整備率や指導できる教員の数を議論している日本の教育現場の実態は、あまりにもお粗末といえまいか。
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