大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>41.なぜ、いまシャープの社長が交代するのか
2007/03/19 18:44
週刊BCN 2007年03月19日vol.1179掲載
シャープの歴代社長をみると、19歳で創業した早川徳次氏は別にしても、1970年に社長に就任した佐伯旭氏が53歳、86年に就任した辻晴雄氏がやはり同じく53歳。現社長の町田勝彦氏は、98年の社長就任時には54歳だった。さらに、歴代社長が10年以上の在任期間となっていることをみると、9年目となる町田社長の退任は数年先の話となる。49歳の片山氏が、「慣例通り」に53歳になったタイミングが、最も有力な交代時期とみられていた。
■新工場を最初から任せたい
では、なぜ、この時期に社長交代となったのだろうか。
町田社長は次のように語る。
「亀山第1、第2工場も軌道に乗り、ひとつの区切りがついた。また、今年夏に公表する予定の新工場の計画についても、最初だけ私がやって、後を引き継ぐという中途半端な形にするのではなく、初めから新社長でスタートを切ったほうがいいと考えた」
先頃、一部マスコミで、液晶パネルの新工場が姫路に建設されるとの報道があった。シャープでは、この計画について「決定しているものではない」とするが、第10世代の生産設備といわれる新工場の整備投資額は、亀山第2工場を上回る規模になるのは明らか。これを片山社長体制で推進することになる。
町田社長は、「ケジメをつけるには、最適のタイミング」とするが、これは、将来のシャープの経営を左右する液晶新工場の建設計画を指したものだといっていい。
だが、49歳という若さは、電機大手のなかでは異例である。
片山氏は、「49歳といっても、年末には50歳になる。また、海外の経営者をみると、決して若くはない」との考えを披露する。また、町田社長は「私より13歳も若いが、知力、体力ともに充実した年齢だと判断した」と語る。
片山氏は、町田社長の就任とほぼ同じタイミングで、TFT第二事業部の事業部長に就任。「年上の部下をうまくまとめて、組織を引っ張っていたことが印象的。赤字だった液晶事業を立て直し、シャープの基幹事業に育て上げた手腕には、絶対的な安心感を持っている」(町田社長)と評価する。
■海外での知名度を高める
課題は、液晶テレビ事業における海外戦略だ。
町田社長は、やり残したこととして、「海外のブランドイメージは決して高くない。日本のように高めていけるかが課題」と語る。
これは、液晶パネルに加え、昨年から液晶テレビ事業の担当となった片山氏が、1年間にわたって取り組んできた課題でもある。
「米国では3つの製品ラインを用意でき、さらに販売、生産体制も全世界規模で整ってきた。今年の年末商戦には本格的に戦える準備ができた」と片山氏は説明する。
片山新社長の手腕は、まずは、液晶パネルの新工場計画の立案、そして、年末における海外での液晶テレビ事業の成果で評価されることになる。
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