大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>40.プレミアム製品が売れるその裏で

2007/03/12 16:51

週刊BCN 2007年03月12日vol.1178掲載

 消費者の価値観が大きく変化している。大量消費時代は、安いものが注目を集めたが、多品種少量生産時代の今は、品質を求める、あるいはこだわりを求めるという消費者が増加している。

 経済産業省が調査した「生活者の感性価値と価格プレミアムに関する意識調査」では、こだわりをもって購入する商品として、テレビ・冷蔵庫などの電化製品と回答した人が、70.5%(「こだわる」および「ややこだわる」とした回答者の合計)に達し、ファッションの61.9%、車・バイクの58.9%を上回るという結果が出た。

 車やバイクといった嗜好を反映するような製品より、電化製品に対して、デザイン、品質にこだわる人が多いのである。

 これを反映するように、PCやAV機器、家電製品などでもこだわり商品に対する需要が増加している。

■“高級モデル”を強気に投入

 シャープは、液晶テレビの新製品として、「AQUOS史上、最も美しい」とする「Rシリーズ」を投入。社内では、「プラズマテレビに劣っていたところをすべて解消する、プレミアム仕様を目指した」というように最上位製品と位置づける。Rシリーズ全体の出荷計画は月1万4000台と、高級モデルながら意欲的な方針を掲げる。

 白物家電でもそうした動きは顕著だ。日立アプライアンスは、昨年秋に投入したエアコンの高級モデルに続き、最上位と呼ばれる新製品を今年2月に発表した。

 「エアコンのプレミアム製品」とするこの製品は、主力となる14畳タイプ(4.0kw)の市場想定価格で29万8000円前後と、かなりの高価格設定だ。それでも、「昨年秋に発売した高級モデルとあわせて、約35%の構成比を目指す」と意欲を見せる。

 そして、PC分野においても、高機能モデルへの注目が集まっている。

 1月30日から出荷がはじまったWindows Vista搭載PCでは、市場全体の約6割がHome Premium。なかでも、Home Premiumを主力に据えたNECでは、出荷数量の約9割を占めているというほどだ。

 マイクロソフトWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長は、「Vistaは発売以来好調。とくにプレミアムエディション搭載PCに人気が集まっており、VistaによってPCの平均単価が上昇している。大画面テレビでPCを利用するという、新たな体験をもたらす製品も登場しており、マイクロソフトが目指すプレミアムデジタルライフが実現されはじめている」と語る。

■収益とリンクしない高級志向

 だが、高級志向へとシフトしている消費動向だが、これがメーカーの収益確保という点で見ると課題も残る。

 白物家電事業では利益確保に苦労するメーカーが多く、薄型テレビでは、垂直統合モデルを持たないメーカーは赤字から脱却できないという状況だ。そして、PC業界においても、収益確保に苦しむメーカーが相次ぐ。

 一般論としていえば、高級モデルのほうが収益を確保しやすい。その比率が高まれば、利益は確保できるだろう。だが、それでも収益に苦しむメーカーが多いというのは問題である。産業構造自体に課題があるのか。
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