大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>39.対照的なNECと富士通のVista戦略

2007/03/05 18:44

週刊BCN 2007年03月05日vol.1177掲載

 Windows Vistaの個人向けプロモーションのキーワードとして、マイクロソフトは「プレミアム・デジタルライフ」という言葉を使いはじめた。昨年12月までのプロモーションでは、「デジタルライフスタイル」としていたが、これを進化させ、新たに「プレミアム」を付け加えたのだ。

 では、このプレミアムにはどんな意味があるのだろうか。

 マイクロソフトWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長は、次のように語る。

 「プレミアムには、2つの意味がある。ひとつは、eメールやインターネットを中心としたPCの使い方から、これを越えた新たな使い方をしてほしいというメッセージ。Vistaによって、デジタル写真やデジタル音楽の楽しみ方、録画したテレビ番組や映画の視聴の仕方を進化させ、より多くの方々に一歩進んだ使い方をしていただきたいという意味。そして、もうひとつは、個人ユーザーの方々にVista Home Premiumを利用していただきたいというメッセージ」

 マイクロソフトでは、日本の個人向けPC市場ではHome Premiumが半数を超えると予測しているのだ。

■Home Premium重視のNEC

 これに呼応した形で製品を投入したのがNECだ。個人向けPCとして、ノートPC「LaVie」、デスクトップPCの「VALUESTAR」および「Value One」の新製品7タイプ27モデルを投入、そのうち23モデルにVista Home Premiumを搭載した。主力モデルでは、Vista Premiumロゴを取得。NEC製PCを購入したユーザーがVistaならでの機能を安心、そして快適に利用できる提案を行った。

 NECパーソナルプロダクツの高須英世社長は、「Vista本来の機能を楽しんでもらうためには、Home Premiumが不可欠だと考え、多くのモデルにこれを搭載した」と語る。

■初期戦略を転換した富士通

 一方、逆の戦略をとったのは、富士通である。

 30モデル中11機種で、Home Basicをラインアップ。しかも、Home Basicの出荷比率を6割と試算し、Home Premiumは4割にとどまると読んだ。

 富士通経営執行役パーソナルビジネス本部長・山本正己氏は、「初期需要を考えると、まずは、買い控えていたユーザーの購入が中心となる。その点でも、XP搭載PCとの価格差を感じない価格設定が必要だと考え、Basicの比率が高まると考えた」と語る。Vistaの良さが世の中に浸透するとみられる夏モデルから、Home Premiumの比率を引き上げることを目論んでいたのだ。

 だが、初期需要の状況をみると、結果としてはNECの戦略が的を射ていた。発売直後から、Home Premiumの出荷比率が一気に高まったからだ。一方、富士通は国内生産による柔軟性を生かして生産計画を見直し、Premium搭載モデルの出荷比率を拡大。その機敏な動きで、デスクトップPCにおいてトップシェアを維持することに成功した。

 初期の戦略では、対極ともいえる方針をとったNECと富士通。だが、今後はHome Premiumを主軸とした戦略に一本化するのは明らかなようである。
  • 1