店頭流通
エレコム 独サプライ企業を子会社化 欧州攻略をにらんだ拠点に 成長見込める巨大市場に期待
2007/02/26 18:45
週刊BCN 2007年02月26日vol.1176掲載
2月27日に子会社化するednetAGは、100年を超える歴史を持つ独Boeder社を起源とするPCサプライメーカー。2005年12月期の売り上げは1930万ユーロ(約30億円)と、欧州のトップグループとは差があることが、エレコム子会社の道を選択した要因だ。
「グローバル化が進むなか、世界市場で通用しないメーカーは生き残れない」(葉田順治社長)との判断から、エレコムは03年には英国、ドイツ、イタリアに現地法人を設立するなど、海外進出に積極的な姿勢をみせてきた。しかし「日本と欧州との商習慣の違い」もあり、期待通りの成果を上げることなく昨年7月には現地法人をオランダに集約するなど、海外戦略が行き詰まりをみせていた。
今回のednetAGの子会社化によって、同社の販売ルートを活用しながら全欧州へと販路を広げるエレコムの新欧州戦略がスタートする。
ednetAGは、サプライやIOデバイスなどPC関連商品で600種類のアイテムを持ち、子会社化後もこれらednetAG商品を主力とした販売スタイルを継続する。
商品政策については「商品特性や製造コストその他、さまざまな要素が欧州市場に合うかどうか見極めた後、勝算の高い商品分野で攻勢をかける」方針だ。見極めるまでの期間については「4-5年かけて十分に検討する」としており、「目先の利益確保を目的とするM&Aとは本質的に異なる」ことを強調する。
現在のPC周辺機器の世界市場は約13兆円。このうち米国市場が約39%を占め、欧州市場は約28%、アジア・太平洋は約26%の割合とされる。米国の人口が3億人弱、欧州はEU加盟27か国の人口だけでも4億5000万人を上回り、ロシアなど東欧諸国やトルコ、北アフリカなどの周辺地域を含めると、今後大きな成長が期待できる巨大市場であることは間違いない。
さらに欧州市場には「リスクが分散できる」メリットがある。EU加盟27か国をみてもそれぞれの言語と文化があり、人種のるつぼと言われながらも環境としては米国流の単一文化が支配する米国市場との大きな違いだ。
ビジネスにおいても「一度失敗すると全米市場を失うことになりがちな米国市場に対して、さまざまな地域文化が複雑に絡む欧州市場では、一地域での失敗が他地域では成功につながることも少なくない」という。つまり「市場の成長が期待され、しかも地域ごとにリスクが分散できる」ことが、エレコムが米国ではなく、まず欧州をターゲットとする理由だ。
しかし日本市場と欧州市場では商習慣以上に文化も違う。新商品の投入が相次ぎ商品サイクルが短くなる一方の日本に対して、ednetAGが本社を置くドイツでは「新商品の投入サイクルが極めて長く、ゆったりしている」という違いがある。
時代をリードする新商品を次々と投入することで他社との差別化を図ってきたエレコムが、商品に必要以上の変化を求めない市場でどのように力を発揮するのか。ednetAGとの関係を含めて、今後、日本メーカーの欧州進出の試金石として関心が高まっている。
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