店頭流通

セキュリティ市場 Vista発売に沸くソフトメーカー

2007/02/26 16:51

週刊BCN 2007年02月26日vol.1176掲載

トレンド、シェアトップ狙う

 1月30日に新OS、Windows Vistaが発売された。PCメーカー各社は続々とVista搭載PCを発売し、買い控え傾向も緩和するのではないかという期待がある。Vistaはセキュリティ機能を高めたOSでありながらも、あくまで「セキュリティの基盤」としてパートナー企業に考慮し、アンチウイルスなど特定の機能を実装していない。セキュリティメーカーには絶好の商機となる。(鍋島蓉子●取材/文)

■Vista発売週、前年比20%増 活況呈するセキュリティ市場

 Vista発売前後のセキュリティソフトの動向を、1月1日-2月11日のBCNランキング各週次データで見ると、前年同週比で販売本数は増加傾向にあり、今年はじめの1月1-7日で9%伸長、その後もプラス成長のまま推移している。セキュリティソフトの消費者への認知が進むにつれ、徐々に市場規模が拡大してきているとも考えられるが、特にVista発売週の1月29日-2月4日の週には20%のプラス成長となり、発売効果が如実に現れる結果となった。

2月5-11日、直近のメーカー別シェアでは、今年に入り、シマンテックが33.0%と、大きくシェアを落としつつも1位を維持。トレンドマイクロは26.9%で2位、続いてソースネクストが25.2%のシェアで3位につけている。同週の機種別販売台数シェアでは、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」が16.5%で首位と好調。2位には14.9%でトレンドマイクロの「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ 優待 1年版 Vista対応」がつけ、3位は、シマンテックの「ノートン・インターネット セキュリティ 2007」(13.7%)の順となっている。

 昨年はジャストシステムが新規参入し、そして今年はVista発売に合わせてマイクロソフトが総合セキュリティソフト「Windows Live OneCare」でセキュリティソフト市場に参入してきた。マイクロソフトは1ライセンスで3台までインストールでき、店頭価格6500円で販売しているが、さらに発売記念キャンペーンとして2000円キャッシュバックも行っている。マイクロソフトは1月29日-2月4日の発売週で4.1%のシェアを獲得した。

 また、ジャストシステムは性能で勝負するとして、価格競争が激化するなか、あえて下げることをしなかった。しかし、発売週に4.4%を獲得。その後は2%台で推移していたが、Vista発売が真近に迫った1月15-21日の週に目標に掲げていた5%のシェアを超え、5.7%を獲得。市場にその存在を示した。

■トレンド『Certified』ロゴ奏功 上位3社のVista効果は

 Vista発売で最も大きく効果が現れたのはトレンドマイクロだ。

 トレンドマイクロは昨年9月、1ライセンスで3台までのインストールが可能で、なおかつ複数年更新せずに済むバージョンを用意し、低価格に加えさらなる付加価値をつけた。

 発売前、トップメーカーとの間に10ポイント以上もの差をつけられていた同社。同製品発売で、好調な売れ行きを示し、9月18-24日の発売週には、32.7%を獲得、首位を独走していたシマンテック(31.7%)に1ポイント差ではあるが首位に躍り出たこともある。

 その後、ランキングが変動するかと思われたが、再びシマンテックが首位に返り咲き、トレンドマイクロも発売前と変わらない24-26%台で推移していたため、元の鞘に納まった感があった。

 しかしVista発売に際し、多少ながら変化が出始めた。1月22日に発売した同製品のVista対応版で「Certified for Windows Vista」という、Vista上での品質が第三者機関に認定されたことを示す称号を取得。セキュリティメーカーではトレンドマイクロしか取得できていないのが奏功したか、1月29日-2月4日のVista発売週には前週の24.9%から3ポイント増の27.9%のシェアを記録した。

 また、販売本数では前年同週比で24%伸長した。沢昭彦・バイスプレジデント・コンシューマビジネス統括本部統括本部長は「新OSはセキュリティソフトを選ぶ最大のチャンス。今年は35%のシェアトップを目指す」と意気込む。

 低価格戦略に着目し、成功したのがソースネクストだ。「ウイルスセキュリティZERO」を昨年7月6日に発売。対応するOSのサポート期限(約10年間)まで使え、3970円という低価格を消費者に訴えた結果、10%前後だったシェアを、7月3-9日の発売週で27.5%まで一気に伸ばした。トップシェア奪取とまではいかなかったものの、トレンドマイクロと拮抗し、根強い人気を誇る。ソースネクストは「Vista対応を昨年7月から表明していた。早い段階の対応表明で消費者がVistaに対応しているという認知がある程度あったようだ」とみている。

 特に1月に入ってから、各社ともVista対応版をリリースしているが、「他社とは違い、Vista対応版製品を出し直していないにもかかわらず、シェアに大きな変動はない」。

 低価格を武器に、大きなシェアを獲得したソースネクスト。今年は年間200万本の販売本数を目標に首位を狙う。

 一方、シマンテックは昨年、他社の追随を許さない30%台後半のシェアで1位を維持した。8月7-13日の週には40.7%まで伸長したこともある。今年に入り、Vista発売で盛り上がるかと思いきや、徐々にシェアを落とし、最近は33%台で推移している。しかしながらVista発売は好転材料になるとみているようだ。ステファニー・エドワーズ・アジアパシフィック&ジャパン コンシューマ マーケティングシニアディレクターは「市場ごとに最良の戦略をもって考えたい」と意欲を示す。日本市場で1ライセンス複数PCにインストールできる製品を販売しているのはトレンドマイクロとマイクロソフトだけだが、そのことに関しては「検討している」と含みをみせた。
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