大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>38.リンク機能で抜きんでたシャープ

2007/02/26 18:44

週刊BCN 2007年02月26日vol.1176掲載

 シャープがわずか半年の間に、DVDレコーダーのシェアを一気に引き上げてきた。それまで4位、5位を争っていた同社が、いまでは松下電器産業と肩を並べて、トップシェアを争う位置にいる。

■ファミリモコンで購買誘う

 シャープの片山幹雄専務取締役は短期間でシェアアップできた理由を、「ひとことでいえば、リンク機能に尽きる」と断言する。

 同社では、AQUOSファミリンクの名称で、液晶テレビAQUOSとDVDレコーダー「AQUOSハイビジョンレコーダー」を連動させる提案を進めてきた。それぞれの機器をHDMIで接続、専用リモコンの「ファミリモコン」をワンタッチするだけで、連動した複数の機器の操作ができる。この機能の提供によって、量販店での売り方が大きく変化したというのだ。

 「DVDレコーダーの売り場で悩んでいるお客さんを見て、液晶テレビはなにをお持ちですか、と店員が声をかける。AQUOSです、という答えが返ってくれば、これがいいですよと、AQUOSハイビジョンレコーダーを勧める。また、液晶テレビを購入する人にも、一緒に同一メーカーのDVDレコーダーを勧めるケースが増えている。液晶テレビで高いシェアを持っているからこそ、DVDレコーダーのシェアも高まる」(片山専務取締役)というわけだ。

 シャープとトップシェアを争っている松下電器も、VIERAリンクによるリンク機能を切り札としている。一方、リンク機能に遅れをとっているソニーは、今年1月の米CESで、BRAVIA Internet Video Linkを展示してみせたが、来月にも発表が見込まれる液晶テレビの新製品において、さらに進化したリンク機能の提案が注目されている。

■チューナーなしで録画できる

 こうしたなか、シャープはリンク機能をさらに充実させた。

 3月から出荷するBlu-ray Discプレーヤー「BD-HP1」では、チューナーを搭載していない、いわばプレーヤーとしての機能であるにもかかわらず、これを「AQUOSファミリンク」に対応した。これによって、液晶テレビAQUOSで視聴している番組を録画できる「ハイブリッド録画」機能や、AQUOSハイビジョンレコーダーに蓄積したコンテンツを録画できる「かんたんBDダビング」といった機能を実現した。

 プレーヤー本体からチューナー機能を排除することで、低コスト化を実現することができるのも、こうしたリンク機能による補完が可能なためだ。

 一方、同時発表したAQUOSハイビジョンレコーダーでは、IrSSによる赤外線通信機能を搭載することで、携帯電話で撮影した写真を大画面の液晶テレビに映し出す「フォトシステム」機能を実現。レコーダーにも静止画を簡単に蓄積できる。「デジカメの画像視聴を、パーソナルからファミリーに拡大する機能」(片山専務取締役)と語る。

 同社では、ファミリンク搭載のこれら一連の製品を指して、「シャープの液晶テレビを中心としたフルハイビジョン戦略に、夢を託してくれたユーザーに応える製品群」と位置づける。

 デジタル家電メーカーの戦いは、単品の争いからリンクの争いに確実に移行している。
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