大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>37.Vistaの花火あがるも、前年割れの実態

2007/02/19 16:51

週刊BCN 2007年02月19日vol.1175掲載

 JEITAは、2006年度の出荷見通しを年度初めの5%増の1350万台の予想から、前年並みの1290万台へと下方修正した。前年度の出荷実績は、1286万台だから、この数字通りにいけば、正確には若干のプラスということになる。

 業界としては、Vista発売をテコにこの数字だけはなんとか死守したいところだ。

 だが、このハードルは意外に高い。逆算してみると、この予測に到達するには、第4四半期(1-3月)には、前年同期比15%増となる433万4000台を出荷しなければならないからだ。

 企業における投資意欲が回復しているとはいえ、さすがに企業需要が2ケタ増の成長率に到達するのは難しい。

■企業向けの拡大はまだ先

 企業向けのWindowsVistaが昨年11月に出荷されたものの、大手企業がVista導入に本格的に動き出すには、検証の期間などを含めて、半年以上の期間が必要。実際、企業向けPCは、昨年末から今年にかけても、前年並みで推移している模様で、この第4四半期に、企業向けPC需要が一気に拡大するとは考えられない。

 となると、足の早い個人向けPCの需要に頼らざるを得ないのは明らかだ。だが、その個人向けPC需要も、予想よりも厳しい出足となっている。

 BCNランキングによると、Vista発売第1週となる1月29日から2月4日の集計では、販売台数が前年同週比6.1%増、販売金額では4.8%増となった。

 年末商戦では前年同期比2ケタ減であったこと、さらに、昨年2月から前年割れで推移していることと比較すると、プラスに転じたことは評価できるだろう。

 だが、これだけの伸び率では、業界が示す前年並みの数値までには到達していない。

 仮に、企業需要が第4四半期も前年並みで推移したとしよう。市場の約4割を占める個人需要が、市場全体をけん引するというシナリオだが、こうなると個人向けPCの出荷台数は、第4四半期には前年同期比4割以上の成長がなければ、JEITAがいう前年並みの数値には到達しないのだ。

 さらに、1月の個人需要が前年割れで推移したため、2月、3月はさらに高い成長率が求められること、比較対象となる06年1-3月が、同四半期としては過去最高の国内出荷実績だったことなどを踏まえると、到達条件のハードルは、想像以上に高いと言わざるを得ない。

■初速の勢いを持続させる策を

 1月30日深夜0時の発売で業界の盛り上がりはピークに達した。そして、PCが1年ぶりにプラス成長にも転じた。これによって、業界内には、少しは安堵感があるのは事実だ。

 だが、このままでは06年度通期の国内PC市場の前年割れになるのは必至といわざるを得ない。

 WindowsVistaの追い風を本物にするのは、むしろこれからの取り組みにかかっている。Vistaの初日の盛り上がりや、プラス成長に転じたことに満足するのではなく、もう一段上の成長に向けて、いま一度、手綱を引き締めるべきだ。
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