大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>36.Vista発売時に感じた「10年前との違い」

2007/02/12 16:51

週刊BCN 2007年02月12日vol.1174掲載

 WindowsVistaが1月30日に発売となった。深夜0時の売り出しのタイミングで、東京・秋葉原、有楽町を訪れてみた。

■使ってこそわかる進化ぶり

 1995年のWindows95の深夜発売を皮切りに、OSの深夜発売、ゲーム専用機の早朝発売など、毎回、現場の取材を重ねてきた立場からすれば、久しぶりに、PC業界に活気が戻ってきた実感が湧いた瞬間でもあった。

 確かに、2か月前のソニー・コンピュータエンタテインメントの「PS3」、1か月前の任天堂の「Wii」の発売に比べると人の数は少ない。だが、PS3やWiiでは、転売目的の外国人が最前列に陣取っていたのとは異なり、自分のために並ぶユーザーばかり。

 約10年前のWindows95の発売時に比べると、カウントダウンを行う店舗が変わり、発売を記念して壇上で挨拶する関係者も変化したが、深夜に駆けつけて、「これから家に戻ってインストールします!」と叫ぶユーザーの姿は変わっていない。

 彼らコアユーザーも、深夜発売に参加する店舗が増え、それぞれの店舗が趣向を凝らした分、深夜0時の発売を楽しんだといえる。その点でも、10年前とは様子が違っていたともいえよう。

 もうひとつ、現場取材で10年前との大きな違いを感じた。

 Windows95の発売時は、PCの普及段階にあり、発売前のプロモーションを強化しておけば、あとは上昇気流に乗った凧ようにPCの販売は増加した。「PCが使えなければ会社の窓際族になる」というような強迫観念も後押しした。

 だが、いまは状況が違う。家庭への普及率が70%を超えており、事前のプロモーションだけでは販売が増加しないのは明らかである。

 しかも、Vistaは大きな進化を遂げているが、その機能の進化を端的に示す言葉がない。新機能の搭載よりも、機能の進化に重点が置かれたOSだけに、使ってもらってこそVistaの進化を実感できる。マイクロソフトが触ってもらうことを懸命にアピールしているのも、それがVistaのメリットを示す早道だと知っているからだ。

■新マーケティングが不可欠

 そうした意味でも、業界が重視しなくてはならないのは、むしろこれからの一手である。

 30日午前11時からの会見に顔を見せたマイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は、「Vistaは、95の5倍、XPの2倍の出荷量を目指す」と宣言した。

 マイクロソフトの試算によると、現在国内で稼働しているビジネスPCは3400万台、家庭向けPCは3000万台だという。合わせて6400万台のPCが国内で稼働している計算になる。このうち、マイクロソフトが、すでにサポートを終了しているWindowsMe以前のOSを搭載したPCは、ビジネスPCで1100万台、家庭向けで900万台とされ、全体の約3分の1にあたる約2000万台が、まずは買い替えのターゲットとなる。この需要をいかに顕在化するかが、最初のステップだ。

 Vistaによる業界活性化はこれからが本番。Windows95の時のようなOS頼りのマーケティングに陥れば、XPの2倍の出荷という目標達成は到底無理だろう。
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