店頭流通

<本紙駆け出し記者 鍋島の突撃ルポ>店頭で見た、聞いた Windows Vista発売

2007/02/05 17:00

週刊BCN 2007年02月05日vol.1173掲載

 天候が危ぶまれたWindows Vista(ウィンドウズビスタ)発売前日の1月29日。雨時々晴れの予報は出ていたが、結局雨は降らず、Vista販売日和になった。Vistaが市場に与えるインパクトについては、期待や憶測を交えてさまざまな予想が飛びかった。実際、あるECサイトの社長に話を聞くと、「メジャーバージョンアップを重ねるごとに勢いは落ちてきている」と憂う。マイクロソフトはこの日に向けて何度も記者会見を開いては消費者に訴求してきた。結果はどう出たのか、29日深夜から30日朝にかけて展開された発売イベントを取材した。(鍋島蓉子●取材/文)

ツクモ、昼から行列がはじまる

 29日午後9時頃、ツクモeX.では準備に追われる店員と、Vistaを求めて長蛇の列をつくる客でにぎわっていた。1番に並んだ男性にVistaは売れるかと単刀直入に聞いたところ、「う~ん」と首をひねる。理由は「OSはソフトを動かすのに必要であって、OS自体に魅力があるわけではない」からだそうだ。ではなぜVistaを買うのか。「深夜に並んでDSP版を買うこと、イベントに参加することに意義がある」と。実は、Windows95の時から毎回「1番のり」だという。今回ツクモを選んだのは、「中央通りに面しているから。あとは2000の時のDSP版でツクモは盛り上がったから」と店にもこだわりを示した。

 10時時点で、並んだ人数は約180人。販売担当者は「今はまだ消費者が様子を見ている段階で、これから伸びていくだろう」と予想する。

 10時半、イベント開始。司会の女性が「今年は暖冬といわれていますが…」と挨拶するも、気温は深夜に向けてどんどん下がってきた。イベントではグラビアアイドルの3人組「Vista Girls」と、ボディビルダー2人組の「Ultimate Brothers」が登場。抽選大会などで盛り上がった。最前列に陣取ったのは、本格装備の一眼レフを引っさげ、アイドルを撮りにきた中年のおじさんたちだった。

有楽町、MSのトップが登場

 一方、有楽町ビックカメラでは、11時30分過ぎに宮嶋宏幸社長がステージに登場し、「待ちに待った瞬間をみなさんとご一緒できてうれしい。Vistaは触って体験してみて良さがわかる商品。ぜひとも体験してほしい」と、500人まで膨れあがった行列に大声でエールを送っていた。1番のりは29日の午後8時30分から並んだという会社員の男性。「せっかくだし、1番で買いたいと思った。Vistaはグラフィックス機能などがきれいだと思う」と感想を述べた。Windows Vista Ulitmateを購入し、職場のパソコンで使用する予定だという。

 続いてマイクロソフトのダレン・ヒューストン日本法人社長と佐分利ユージン執行役常務が登場。佐分利常務は「Vistaは開発史上最大のプロジェクト。ウェブサイトでは『Vistaが世界を変える』とうたっているが、マイクロソフトが(デジタルの)世界を変えるわけではなく、ここに集まっている人々が(Vistaを)使ってもらうことで、世界が変わる。その素材を提供できることがうれしい」と場を盛り上げる。

 午後11時59分からカウントダウンの開始。ステージ横のモニターが0を示し午前0時になると、宮嶋社長、佐分利常務らがくす玉を割ってWindows Vistaの発売を祝福。販売開始と同時に多くの人がVistaのパッケージを次々と買い求めた。

ヨドバシ、レジ前に人だかり

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは、11時30分からいよいよイベントの幕が開いた。スタート直後には、駅直結の喫茶店のベランダあたりが、イベントを見るヤジ馬で埋まっていた。ステージに立った五十嵐章・Xbox事業本部リテール営業本部本部長は「世界に先がけてVistaを発売する。どんどんVistaを盛り上げていきたい」と意気込みを語った。

 その後、ヨドバシの正門上の大画面モニター一杯に、カウントダウンの様子が映し出される。くす玉が割れた瞬間をカメラに収めようとしたが、あたり一面の人垣で失敗。悔やんでいるのもつかの間、引き渡しレジの周囲に黒山の人だかりができあがった。近づこうにももみくちゃにされて、カメラを落としそうになる。ヒューストン社長がレジに現れたのだ。イベント終了後、報道陣に囲まれたヒューストン社長は「PC買い控えの状況は変わる。Vista発売2-3週間前、消費者は安いPCを買いに走った。妥当な期間を経て回復するだろう」と見通しを語った。

 ヨドバシの五十嵐本部長に「消費者のなかには『XPで間に合う』と考えている人もいるが」と質問をぶつけた。「XPでいいやっていうのがわからない。一度でもPCを使ったことがある人なら、Vistaから離れられなくなる」と自信をみせる。

 30日朝に開かれたマイクロソフトの会見で、ヒューストン社長は「Vistaを世界でも、国内でも、95の5倍、XPの2倍販売したい。現在のPC導入台数からいってこの数字は妥当」と強気の姿勢を示した。販売店やマスコミがVistaで加熱するなか、意外にも冷めているようにも見える消費者だが、業界をあげて、購入の動機づけをいかに行っていくか注目していきたい。
  • 1