大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>34.シャープが記者会見でみせた強みと弱み
2007/01/29 18:44
週刊BCN 2007年01月29日vol.1172掲載
年間の方針説明が主旨であるだけに、本来ならば、横断的に事業方針を語ってもいいものだが、町田勝彦社長が触れたのは、液晶テレビ事業と太陽電池事業の2点だけ。報道関係者に対して、シャープが目指す方向を明確に示す狙いがあったのだろう。
■大画面化へのこだわり
実際、屋台骨といえる液晶テレビ事業をどう成長させるのか、今後の事業の柱と位置づける太陽電池事業に、いかに取り組んでいくかということは、中期的な生産計画まで含めた具体的なものとして明確に伝わってきた。
そして、液晶テレビ事業における発表内容も、メッセージ性を強めたものだった。
キーワードは大画面化だ。2006年度の全世界における液晶テレビの市場予測を4200万台から4500万台へと上方修正。さらに、07年度は、前年比50%増の6800万台に拡大すると予想した。とくに、40インチ以上の製品の構成比が、06年度の12%から20%に拡大すると予測。「シャープでは、06年度には、年間600万台の液晶テレビの出荷を計画しているが、そのうち40インチ以上の構成比は約12%。07年度には、900万台を見込み、約40%を40インチ以上で占めたい」(町田社長)と、大画面化を積極的に推進する姿勢をみせた。
今のシャープの勢いからすれば、07年度の計画を、1000万台とすることもできただろう。だが、1000万台の数字を掲げたときには、40インチ以上の大画面テレビの構成比が4割を切ることになるのも明らかだ。シャープは、大画面化のメッセージを強調するために、あえて900万台、4割という数字を強調したとも考えられる。
■ネックは海外事業
しかし、シャープに懸念材料がないわけではない。
最大の課題は海外事業だ。
今年7月には、亀山第2工場の第3期生産ラインを稼働。現在の月産3万枚のマザーガラスの投入能力を月産6万枚とし、08年中にはこれを9万枚にまで増強させる。これにより、海外の旺盛な液晶テレビ需要に対応する体制を整える一方、ポーランドでは、今年1月から月産10万台体制で液晶モジュールの生産を開始。今年末には月産30万台体制とするほか、7月には、液晶モジュールから液晶テレビまでの一貫生産を開始する予定を明らかにした。さらに、メキシコ工場では、7月を目処に液晶モジュールから液晶テレビまでの一貫生産を行う第2工場を新設し、42-65インチの大型液晶テレビを中心に月産20万台の体制としていくという。
だが、中核となる北米市場での仕掛けや、欧州での今後の展開などについては、なんら触れなかった。これは裏返せば、年頭会見で強調できるほどの成果があがっていない証ともいえる。
シャープにとって、海外事業の成長は、今後の液晶テレビ事業の最大の課題。10年には、全世界のテレビ需要の10%のシェアを獲得する「グローバル10」を目指す同社にとって、避けては通れない取り組みだ。自信を持って、海外戦略を語れるシャープになるのはいつなのか。
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